人口減少で民族大移動がさらに加速する

 このところ、郊外の不動産が積極的に売りに出されています。これまであまり動くことがなかった、価格の高い戸建て物件もその対象となっています。日本では水面下で人の大移動が起こっているようです。

ブランド力ある地域にまで売りが波及

 これまで中古住宅の売買といえば、マンションがほとんどでした。しかし人口の減少が顕著になってきたことから、郊外にある戸建ての物件が徐々に売りに出されるようになっています。

 最近では東京の世田谷や神奈川県の鎌倉など、ブランド力のある街といわれたところにまで、こうした動きが波及してきています。

 その背景には高齢化に伴う人の移動があります。郊外の戸建てに住んでいた人が高齢化し、子供の独立などをきっかけに、都市部のマンションなどに住み替えていると考えられるのです。持ち主が亡くなってしまい、子供がその物件を売りに出すというケースもあるでしょう。

 先日、筆者が見た物件は、東京郊外にある高級物件でしたが、中はすべてバリアフリーに改造してありました。老夫婦が住んでいましたが、残念ながら旦那さんが亡くなってしまい、残った奥さんは、さらに便利な都心のマンションに引っ越すそうです。

 こうした動きは、人口の玉突き現象を引き起こします。大都市圏の郊外から中心部に人が移り住み、郊外の住宅地には、さらに郊外や地方から人が移ってきます。最終的には、都市圏から遠いところでは人が住まなくなるという状況が発生することになります。

 東京の都心では今、尋常ではない勢いでマンションが作られています。こんなに建てて買う人がいるのだろうかと思えますが、人口が玉突きを起こすということを考えるとそれも納得です。同じ事は地方の中核都市でも起こっており、中心部ではマンションがたくさん建設され、郊外から人を奪っているわけです。

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自治体の半分が消滅してしまう?

 政府の有識者委員会では、このままの状態が続くと、4分の1の自治体が消滅の危機にさらされると警告していますが、もっと厳しい試算もあります。

 元総務大臣の増田寛也東大客員教授が座長をつとめる「日本創世会議・人口減少問題検討分科会」によれば、出生率を2以上に上げたとしても(現在は1.4)、都市部への人口流出を止めない限り、半数の自治体が消滅する可能性があると指摘しています。

 政府は、人口の流出に歯止めをかけたい意向のようですが、現実的な人の流れを止めるのはかなり難しいでしょう。

 最近、ファストフード店などでアルバイトを確保できないという話を耳にしたことがある人も多いと思います。これも人口動態が大きく影響しています。ここ10年、若者の人口は2割も減っており、企業の現場では本当に人が足りなくなっています。

 人の動きと求人倍率には極めて高い相関があるといわれています。都市部では人が足りなくて困っている状態ですから、ますます地方から人が都市部に移動してくるでしょう。一方で、住宅の数の絶対数は減りませんから、日本全体で見ればどんどん住宅が余ってくるわけです。
 
 不動産投資に興味を持っている人は多いと思いますが、不動産の投資は場所がすべてといわれます。こうした人の流れがどうなっているのかを十分に見極めることが重要でしょう。