三菱が社運をかけるMRJで日本のもの作りは復活するのか?

 半世紀ぶりの国産旅客機となる三菱重工のMRJ(三菱リージョナルジェット)がとうとうその機体を初披露しました。初飛行はまだ来年ですが、この段階ですでに400機(仮受注も含む)の受注を獲得しており、新規参入としては上々の滑り出しといえるでしょう。

日本の製造業復活の期待が寄せられているが
 MRJは夢の国産ジェット機ということで、ものづくり日本の復活も期待されているようです。メディアなどでは「MRJは日本人の誇りだ!」といったようなトーンの記事も多く見られます。

 確かに、これまで、海外メーカーが独占していた航空機産業に日本勢が加わることは喜ばしいことです。一方で、航空機産業も他の業界と同様、コモディティ化が進んでおり、もはや特別な分野ではなくなりつつあります。
 水平分業も進んでいますから、MRJが成功したからといって、単純に日本ののもの作りが復活できるという状況ではなさそうです。

 日本は戦争中まではゼロ戦の開発でも知られているように、航空機の分野でも高い技術力を持っていました。しかし太平洋戦争の敗北によって、しばらくの間、関連分野の研究・開発は停止させられ、諸外国に比べて大きく遅れを取ってしまったのです。

 その後、官民が一体となって国産旅客機YS-11が製造されました。この機体は飛行機としてはまずますのものだったのですが、経営的には完全に赤字で、後継機の開発につなげることはできませんでした。

 YS-11が生産中止になって以後、世界の航空機産業の環境は大きく変わりました。以前はボーイングやエアバスといった完成機メーカーが設計から、部品の発注、製造までをすべて行っていたのですが、効率化の追求によって、パソコンのような水平分業が徹底されていったのです。

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航空機の分野もパソコンのようになっている?
 現在では、メガサプライヤーと呼ばれる部品メーカーによる寡占化が進んでおり、製造工程の多くをこうしたサプライヤーが担うようになっています。
 完成機メーカーはメガサプライヤーから半完成状態でモジュールを購入し、最終組み立てだけを行うというのが現在の流れなのです。むしろ完成機メーカーに求められているのは、各国のエアラインに販売するための営業力です。

 現在では、コスト面の制約からこうした形態以外で航空機を製造することはほぼ不可能となっており、三菱重工も例外ではありません。
 MRJは国産ジェットというイメージが強いのですが、いわゆるメガサプライヤーのほとんどは欧米企業であり、基幹部分であるエンジンをはじめ、結果的にMRJが使用する部品の何と7割が海外製になっています。現実問題としてオールジャパンで飛行機を飛ばすということは難しいのです。

 MRJが成功すれば、関連する部品メーカーや材料メーカーが恩恵を受け、国内の製造業に全般に波及効果があると思われがちですが、実際にはそうでもないわけです。製造業はグローバル化が進んでいることをあらためて感じさせます。

 もっとも、MRJのプロジェクト自体には非常に大きな意味があります。

 コモディティ化が進んだといっても、航空機製造はまだ付加価値が高い分野です。最終製品を組み立てる完成機メーカーは国際的に大きな影響力を持っています。少なくとも、最終製品をボーイングやエアバス、エンブラエルといった海外メーカーに独占されないという効果は大きいでしょう。

 また、リージョナル機の市場では、現在ブラジルのエンブラエルが圧倒的なシェアですが、2位のボンバルディア(カナダ)はそれほどでもありません。三菱の営業努力次第では、ボンバルディアから一定のシェアを奪える可能性は高いでしょう。
 リスクはありますが、同社がリージョナルジェット分野に進出することは、ビジネス的には意義があることと考えられます。