加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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すでにバブル?活況呈する東京の不動産市場はいつまで続くのか?

 

 先日、日本の不動産市場を象徴する大型物件の売買が成立したとの発表がありました。シンガポール政府投資公社(GIC)が2014年10月21日、東京駅前の高層ビル「パシフィックセンチュリープレイス丸の内」を1700億円で買収したのです。

日本の不動産市場の象徴ともいえるビル
 現在、東京の不動産市場は大変な活況を呈しており、大型の物件取得や再開発が相次いでいます。このコラムでも、バブル経済の象徴といわれた目黒雅叙園が森トラストによって買収されたことに触れました。

 今回のシンガポール政府による大型ビルの買収は、目黒雅叙園と同じくらいのインパクトのある取引といえます。なぜなら、このビルは、最近の日本の不動産市場の映し鏡になっているからです。

 もともとこのビルは、1997年3月に国鉄精算事業団が実施した入札で、香港のパシフィックセンチュリー・グループが869億円で落札して建設したものです。

 当時、国内では、採算を無視した無謀な計画と揶揄されたましたが、その後、日本の不動産価格は急上昇することになります。

 2006年には国内の投資ファンドであるダヴィンチ・アドバイザーズ(当時)に約2000億円で売却されましたが、リーマンショックで同社の経営は悪化し、2009年にはセキュアード・キャピタル・ジャパンに1400億円で売却されました。
 今回の売却によって、セキュアード・キャピタル・ジャパンは300億円の売却益を得た計算になります。まさにこのビルは、グローバルな投資資金の恰好のターゲットとなったわけです。

 このところ円安が進んできたことで、グローバルに見た場合、日本の不動産には割安感が出ています。また、インフレ期待も高まってきていますから、一部の投資家にとっては、今が「買い」のチャンスなのかもしれません。

 ただ、首都圏の不動産取引が好調となっている背景には、経済の二極分化による投資の偏りで、供給が足りなくなっていることや、銀行の融資先が不動産以外に見つからないという需給的な面も大きいのが現実です。

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新しいテナント需要がないのはリスキー
 東京の大手町や丸の内を歩くと、あちこちでビルが取り壊され、新しいビルの建設が進められています。アベノミクスで景気の先行きに明るさが見えてきているとはいえ、日本はまだ景気低迷のまっ最中です。本当にこれだけのビルの建て替え需要があるのかは少々疑問です。

 しかし、こうした建設ラッシュは、テナントの実需だけで決まるものではありません。むしろ金融の影響を大きく受けることの方が多いのです。

 現在、量的緩和策で金融機関にはジャブジャブとお金が供給されています。しかし、日本は産業構造が大きく変わりつつあり、国内で大規模な投資を行い工場を建設する企業は少なくなっています。このため、いくら銀行にはお金があっても、よい融資先を探すことは困難になっているのです。

 このような時、銀行にとってもっとも都合のよい融資先がビルの建設です。不動産ですから、企業に融資に比べて担保価値があります。銀行は事業性を審査する必要がなく、失敗しにくい融資が実行できるわけです。このため、首都圏のビル建設には、簡単に融資が付くというのが現実で、これが建設ラッシュを後押ししているのです。

 しかし、いくら新しいビルを作っても、経済全体のパイが増えないと、テナントは増えてきません。結果的に、より築年数の古いビルからテナントを奪うだけという結果になってしまいます。

 この図式は今度は都市部と地方の間にもあてはまることになるでしょう。地方から都市部へと人や企業が移動しているだけで、全体のオフィス需要に大きな変化はない可能性があります。この構造は、いつか限界が来ることになるでしょう。

 もし首都圏で大規模な再開発を行うのであれば、新しいテナント需要の創造とセットでなければなりません。
 もっとも確実なのは、海外に対して市場を開放し、外国企業を国内に誘致することです。そうすれば、新しいビルをいくら作っても、その施設が余ることはなく、古いビルからテナントが消えてなくなることもありません。

 しかし今の日本には、規制緩和や外国企業の誘致に対して強いアレルギーがあり、この政策はなかなか実現しません。
 しかし、新しいテナント需要を開拓しなければ、最終的にはテナントのいない古いビルが日本中に溢れてしまうことになります。特に地方の状況が深刻になる可能性が高く、これはあまり賢い選択肢とはいえません。

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