日本の労働生産性が諸外国に比べて低く推移しており、これが日本の貧しさの原因であるという話は、多く人が知るところとなっています。
日本の労働生産性は過去50年にわたって主要先進国で最下位という状況なのですが、ここでひとつの疑問が浮かび上がります。日本はかつて1人当たりのGDP(国内総生産)が主要先進国中で1位になったこともあります。労働生産性と1人あたりのGDPには密接な関係があるはずですが、これはどういうことなのでしょうか。
日本の労働生産性は万年、先進国最下位
2017年における日本の労働生産性(時間あたり)は47.5ドルとなっており、主要先進国では最下位でした。1位の米国は72ドル、2位のドイツは69.8ドルもありますから、日本の生産性はトップを走る国の3分の2しかありません。同じ稼ぎを得るために、1.5倍の労働時間(もしくは人数)を投入しているわけですから、日本人が豊かな暮らしを実現できないのも当然でしょう。
実はこの労働生産性の順位は過去50年間、ほとんど変わっておらず、日本はずっと最下位のままです。
1980年代に一時、諸外国の生産性に近づくかに見えましたが、そこがピークで、その後は、差を縮小できていません。マクロ経済的には労働生産性と賃金には密接な関係がありますから、日本人の賃金がずっと低く推移しているのは、労働生産性が低いことが原因と考えてよさそうです。
ところが、この話には少し疑問を感じた人もいるかもしれません。
日本はかつて1人あたりのGDPで世界2位となり、主要先進国では1位になったこともあります。1人あたりGDPが大きいのに、なぜ労働生産性が低いという状況になるのでしょうか。そのカラクリは為替にあります。
購買力平価の為替レートで見ると日本は下位
表(上)は日本の1人あたりGDPの主要先進国中の順位を5年ごとに記したものですが、1970年まで最下位だったにもかかわらず、85年から順位が急上昇し、1990年、1995年、2000年ではトップになっています。ここで注目すべきなのは1985年から順位が急上昇したという点です。
1985年にプラザ合意が成立し、日本はその後、想像を絶する円高に直面しました。1ドル=250円だった円は、わずか10年の間に、1ドル=80円台まで急騰しました。円の価値が一気に3倍になったわけですが、これは一種の市場の暴走であり、実体経済を反映したものではありません。
1人あたりのGDPは、基本的に名目為替レートでドル換算して比較しますから、円が過剰に高くなると1人あたりのGDPも大きく増えてしまうのです。
一方、労働生産性は名目の為替レートではなく、より現実の生活に近い、購買力平価の為替レートを用いて計算されます。このため過剰な円高にはならず、日本の順位はずっと低いままで推移しました。
ちなみに購買力平価の為替レートを使って1人あたりのGDPを計算すると、日本は最高で4位になったことがありますが、ほとんどの時期において、最下位もしくは下から2番目となっています(表の下)。日本が世界でもっとも豊かになったという話は、過剰な円高が生み出した数字のマジックと考えてよいでしょう。
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