日本でもビジネスチャットを導入する企業が増えています。電子メールとビジネスチャットは基本的な概念が違っており、コミュニケーションのあり方も大きく変わります。
ビジネスチャット時代には、役職の上下でしか相手との関係を構築できない昭和型社員や、自己中心的でギブアンド・テイクのない社員は淘汰されていく可能性が高いでしょう。
コミュニケーションの意味が変わりつつある
「スラック」に代表されるビジネスチャットは、近年、欧米企業を中心に急速に普及しています。国内では一部のIT企業が活用する程度でしたが、最近では、一般的な大企業でも導入するケースが目立っています。
ビジネスチャットの普及は、社員の評価や昇進にも大きな影響を与えると考えられます。その理由は、同じコミュニケーション・ツールといっても、チャットと電子メールとでは根本的な概念が違っているからです。
社内コミュニケーションには、以下の3つのパターンがあります。
①ライン上の指示・命令
②多数への告知(一斉同報)
③情報やアイデアの緩やかな共有
大量生産の時代には、①と②が重視されていました。役職が下の人間は上からの指示に従っていればよく、社員同士のやり取りは基本的に上下方向が中心だったわけです。
ところが近年は、ビジネスの多様化が進み、こうした仕事の進め方は時代に合わなくなっています。社内に散財しているアイデアをうまく共有し、新しいサービスを生み出すことが強く求められており、上司の役割も命令からコーディネートにシフトしています。こうした時代には③が重要となってくるわけです。
人材の評価基準も劇的に変化する
電子メールにはCCとBCCという機能がありますが、CCはカーボンコピーの略です。最近の若い人は「何それ?」というものだと思いますが、昔は手書きの内容を複写するためカーボン紙を使っていました。
かつての企業では、メモを部下や上司に送ってメッセージを伝えていましたが、カーボン紙を使って複写し、関係者にも配っていたのです。この企業文化を電子化したのが今の電子メールですが、まずは1対1のやり取りがあり、その情報をシェアすべき人を選択することが前提になっていることが分かります。
ところが、1対1の使用を前提としたツールを、情報共有を目的に使い始めると収集がつかなくなります。業種にもよると思いますが、各人が「とりあえず」といった理由でCCを付与し、読み切れないほどのメールが行き交っていないでしょうか。これでは、どれが重要な業務連絡なのか、単なる情報のシェアなのか分からなくなってしまいます。
ビジネスチャットではこのあたりが劇的に改善されますが、話はそれだけでは終わりません。ツールが変わったということは、コミュニケーションの仕組みが変わったということであり、それは社員の評価基準も変わるということを意味しているからです。
ビジネスチャットのやり取りを見ると、誰が組織に貢献しているのか一目瞭然です。
当然、リーダーシップの概念も変わってきます。命令口調で周囲を従わせる人がリーダーではなく、多くの知見を集めて、それをうまくまとめられる人が真のリーダーと見なされるようになるでしょう。こうした時代においては、上意下達にばかり腐心している昭和型社員は付いていけなくなります。自分だけが情報を独占し、ギブアンドテイクしない社員も、淘汰されてしまうと考えられます。