中国経済の失速が日本企業に深刻な影響を及ぼし始めています。日本メーカーの中には、中国向けの輸出で業績を維持しているところもありますから、中国経済の低迷が長期化した場合、日本経済全体にも大きなマイナス要因となってくるでしょう。
ルネサスは何と生産を一時停止
半導体大手のルネサスエレクトロニクスは、中国向けの販売不振から、ほぼすべての工場で生産を一時停止することになりました。期間は長いところでは2カ月に及ぶという大規模なものですから、業績への影響も甚大です。場合によっては全社的な生産が1割減る可能性もあるようです。
ルネサスは特殊な例かもしれませんが、昨年末あたりから業績を下方修正する日本メーカーが相次いでいます。その中には、モーター大手の日本電産や、工作機械を製造するファナックや安川電機など、日本を代表する優良企業が多く含まれています。
中国向けの輸出が激減しているのは中国の景気低迷が深刻になっているからです。
中国の2018年における国内総生産(GDP)成長率は、物価の変動を除いた実質でプラス6.6%と前年を0.2ポイント下回りました。これまで中国は8%以上の成長が続いており、経済が急ピッチで拡大するのが当たり前でした。それがここ2~3年は6%の成長に落ちていましから、それだけでも相当なインパクトです。
今の中国はちょうど、日本の1960年代後半から70年代前半に相当しますが、日本もオイルショックをきっかけに、8%以上の高成長から5%台まで成長率が低下。国内は一時期、大混乱となりました。中国は当時の日本と同じく、発展途上国から成熟国への移行期になりますから、成長鈍化はおそらく一時的なものではないでしょう。
日本経済は輸出依存からの脱却が必要
さらに言えば、中国と米国は貿易戦争の状態となっており、米中交渉が妥結できなければ、米国の景気も悪化する可能性が高くなります。もしそうなった場合、日本メーカーは、中国と米国という巨大な輸出先を2つ同時に失いますから、業績には深刻な影響が及ぶことになるでしょう。
もっとも現時点でも一部のメーカーにとっては大変な事態です。なにせ中国市場は巨大ですから、年間の設備投資総額だけでも640兆円と日本のGDPをはるかに上回ります。中国が設備投資を5%絞っただけでも、32兆円が吹き飛ぶ計算ですから、そのインパクトの大きさがお分かりいただけると思います。
日本はすでに途上国から成熟国にシフトしており、GDPの中で輸出が占める割合は小さいのですが、現実には輸出の増減が日本経済に大きな影響を与えています。できるだけ早期に輸出主導から消費主導経済への転換を進める必要がありますが、雇用シフトの問題などがあり、なかなか前には進みません。
現時点では中国と米国の景気がこれ以上、悪化しないよう祈るばかりです。