経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 経営論

財務諸表には3つの種類がある

会計力養成講座 第1回

 企業の経営状況を分析するためには、財務諸表が読めなければいけません。これはすべての基礎となる部分ですから、しっかりと覚えておいてください。

 この連載は会計ついての専門的な知識を身につけるためのものではなく、ビジネスや投資で幅広く会計の知識を応用することを目的としています。細々とした詳細な知識よりも、大きな枠組みで理解することが何よりも重要です。

 財務諸表とは、企業の経営状況を数字で示したものです。財務諸表と呼ばれるものは主に3つあります。ひとつは損益計算書(P/L)、もうひとつは貸借対照表(B/S)、そしてキャッシュフロー計算書(C/S)です。この3つはセットになっているものですから、常にこの3つを同時に参照するクセを付けてください。

損益計算書は、一定期間における売上げと利益を示したもの

 損益計算書は、ある一定期間の間に企業がどれだけ売上高を上げて、利益を得たのかを示した書類です。大雑把に言ってしまうと、売上高と経費、そして利益について記したものということになります。売上高や経費、利益という概念は日常的にもよく使っていますから、損益計算書は基本的に直感で理解できるものです。

 1年間の結果を示している場合は年次の決算となり、6カ月の場合には半期決算、3カ月の場合には四半期決算となります。損益計算書はこのように期間を決めて数字を出すものですから、少し難しい言い方をするとフローを示していることになります。

貸借対照表は資産の状況を示したもの

 貸借対照表(B/S)は企業が保有する財産を示した書類です。貸借対照表を見れば、どのくらいの資産を保有していて、借金がいくらあり、過去からの利益の蓄積がどのくらいあるのかが分かります。

 企業は赤字になったからといってすぐに倒産するわけではありません。たいていの場合、銀行への返済や取引先などへの支払いが滞ることが、倒産の直接の引き金となります。こうした項目は損益計算書ではなく、貸借対照表に関係していますから、企業の経営状況を分析するためには、むしろ貸借対照表の方が重要です。

 プロの投資家や経営者は、企業への投資やビジネス上の取引を検討する際、必ず貸借対照表を見て資産の状況をチェックします。これは極めて重要なスキルといってよいものです。貸借対照表を読めないままビジネスや投資をすることはかなり危険なことだと思ってください。

 貸借対照表はある時点における資産状況を表わしたものですから、ストックを示していることになります。企業が年度でいくらの利益を上げたのかは損益計算書でチェックできますが、毎年、確保した利益は、内部留保としてその企業の資産に積み上がっていき、貸借対照表に反映されます。つまり毎年のフロー(損益計算書)の結果としてストック(貸借対照表)が出来上がると考えることも可能です。

Copyright(C)Keiichi Kaya

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キャッシュフロー計算書は現金の出入りを示している

 キャッシュフロー計算書(C/S)は現金の出入りを示したものです。企業の経営において現金は非常に重要な役割を果たしています。現金が枯渇すると企業は即、倒産となってしまいます。現金の出入りを示した書類がキャッシュフロー計算書ということになります。

 現金の出入りは、損益計算書とバランスシートを見ればある程度までなら推測できますが、それには結構な手間がかかります。このため重要な情報である現金の出入りに絞った書類があった方がよいということになり、キャッシュフロー計算書が出来上がりました。

 キャッシュフロー計算書は、貸借対照表と同様、経済状態の健全性をチェックするのによく用いられます。企業の財務を分析する場合には、この3つを相互に参照していくことが大事です。

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