貧困や格差を解消するための方策には様々なものがありますが、貧困対策の中核となっているのが生活保護です。今回は生活保護制度について説明したいと思います。
生活保護の金額は1世帯あたり約230万円
生活保護は、資産や能力などをすべて活用しても生活に困窮する世帯に対して、経済的な支援を行う制度です。決められた基準で計算された最低生活費と収入を比較し、収入が最低生活費に満たない場合には、差額を支給します。
支援には様々な種類がありますが、代表的なのものとしては、食費や光熱費など日常生活に必要となる費用を支援する生活扶助、家賃を支援する住宅扶助、医療費を支援する医療扶助があります。
生活保護を受けるためには、生活に利用していない資産を売却することが前提となっており、必要と認められた場合以外は、原則として自動車も所有できないルールになっています。
ただ持ち家を売却してもほとんどお金にならないケースや、自動車がないと生活できないケースもありますから、このあたりは状況に応じて判断されることになります。
2017年11月時点において生活保護を受けている世帯数は164万2971世帯、人数ベースでは212万4526人となっています。2017年度における生活保護費(当初予算)は3.8兆円ですから、1世帯あたり約230万円の給付を受けている計算になります。生活保護を受けている人の数は、このところ多少、鈍化していますが、年々増え続けています。
支援が必要な人の2割しかカバーできていない
ちなみに日本国内で相対的貧困状態にある人は約2000万人いるとされていますが、生活保護を受けている人のは212万人です。この数字だけで考えると貧困者の1割程度しか支援を得られていません。
生活保護を受ける資格のある人の何%に給付が行われているのかを示す数字に捕捉率というものがあります。貧困の状況や生活保護の給付条件は様々ですから、捕捉率は単純には計算できないのですが、日本ではおおよそ20%程度とされています。つまり支援を必要としている人の2割しかカバーしていないわけです。
先進諸外国では60%~90%というのが普通ですから、日本の捕捉率は極めて低いとみてよいでしょう。
生活保護対象者の区分を見ると、給付を受けている世帯のうち、約半数は高齢者世帯となっています。残りは、障害者世帯が12%、傷病者世帯が14%、母子世帯が6%、その他世帯が16%といった割合になっています。つまり生活保護を受けている人の多くは高齢で収入がなくなった人や、病気やケガで働けなくなった人たちです。
一部からは、働く能力があるにもかかわらず不正に生活保護を受ける人が多く、これが制度の維持が困難にしているとの指摘がありますが、実態は異なります。生活保護の問題は高齢化とセットであることを理解しておく必要があるでしょう。