経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 投資

自分は冷静で頭がよいと思っている人ほどバブルに騙されやすい

加谷珪一の投資教室 実践編 第10回

 前回は、投資で成功するためには、情報に騙されてはいけないという話をしました。このことは多くの人が認識しているはずですが、それでも人はウソの情報に騙されてしまいます。自分は頭が良く、冷静だと思っている人ほど実は騙されやすいというのが現実なのです。

実は今もすさまじいバブルが進行中

 株価が上昇を開始すると、最初に出てくるのが「バブルだ」という批判です。ある商品の価格が高騰した時、直感的にバブルだと思ってしまう人は、かなり騙されやすいタイプだと思ってください。市場がバブルなのかそうでないのかは、後になってみなければ決して分かりません。市場が動いている最中に、バブルだと断言することは、それ自体が感情に強く左右されている証拠です。

 これとは逆に、どう見てもバブル状態になっているのに、多くの人がそれに気付かないということもよくあります。実は、現在もある強烈なバブルが進行中なのですが、それを指摘する声はほとんどありません。

 ここ20年、日本ではずっとデフレと低金利が続いてきました。金利が下がるということは、債券価格が上昇しているということですから、言い換えれば、日本の債券価格は一本調子で上昇を続けていたことになります。日銀がマイナス金利政策を導入したこともあり、最近は債券の上昇にさらに弾みが付いています。

 債券価格が額面を上回るというのは、経済的にまったく合理性がないことですから、ここで債券を買う理由はただひとつ、「上がるから買う」ということだけです。これを株式にあてはめれば、日経平均株価が15万円とか20万円になっているようなものと思えばよいでしょう。そこまで債券価格というのは暴騰しているというのが現在の市場環境です。

 この状態がいつまで続くのかは誰にも分かりません。明日、債券市場が総崩れになるかもしれませんし、この状況がさらに10年続く可能性もあります(日銀が買い続ければ当分の間、価格は持続するでしょう)。しかし、異常な価格高騰が継続していることだけは疑いようのない事実です。

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自分は冷静だと思っている人ほど、どっぷりとバブルに浸かっている

 しかし、今の債券市場が異常なレベルのバブル状態になっていると認識している人はどれだけいるでしょうか。ほとんど皆無なのではないかと思います。

 その証拠に、メディアの記事などでは、デフレは今後も続くことが大前提となっているものが少なくありません。デフレが今後も続くということは、債券バブルが今後も継続するという意味です。ちょっと考えれば、この大前提はかなり危険なことですが、これに対して疑問を呈する人はあまりいません。

 それどころかインフレのリスクがあると主張すると、ものすごいバッシングを受けるような始末です。

 債券価格の今後の上昇(つまりデフレの継続)を誰も疑わず、相場が崩れる(つまりインフレになる)と主張する人を激しく批判するという風潮さえ出来上がっています。これをバブルと言わずして何をバブルと呼べばよいのでしょうか。つまり、今、この場においても、歴史的なバブルが進行中なのですが、多くの人はそれに気付いていないのです。

 筆者は金利の上昇について過度に煽るつもりはありませんが、誰も疑問に思わないという現在の状況は危険だとも思っています。「日本経済ははデフレ体質だから云々」といった議論をしている人は、それなりに知識を持った人でしょう。

 自分は頭が良く、冷静だと思っている人ほど騙されやすいと冒頭で説明したのはこういった意味です。ちなみに筆者自身のポートフォリオは、今後、金利の上昇が進むことをある程度、想定したものになっています。

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