このところ、人手不足が深刻になっているというニュースをよく耳にします。牛丼チェーンの「すき家」では、1300円を超える時給でもアルバイトが集まらず、店舗のオペレーションが出来なくなるという事態も発生しているそうです。
また建設業界はすでに慢性的な人手不足で、職人さんが確保できないため、一部の工事が中断するケースも出てきています。
日本はこれまで長期間不況が続き、人が余っているといわれてきました。ここにきて急に人手不足といわれてもピンとこない人が多いかもしれません。
中には「日本人は贅沢になったので仕事を選んでいるだけ。本当は仕事のミスマッチなど起こっていない」と主張する人もいます。こうした意見は半分は当たっていますが、半分ははずれています。
若年層の労働人口は2割も減った
日本がここしばらくの間、人が余っていたのは事実です。不景気で仕事がなくなっているのに、日本の労働人口はそれほど減っていなかったからです。しかし状況は大きく変わりました。労働人口の減少が、特に若年層を中心に激しくなっているのです。
高齢者の労働人口はここ10年でむしろ増加しているくらいなのですが、若年層の労働人口は逆に2割も減っているのです。ワタミやスタバ、ユニクロといった店舗では若い店員さんが中心ですから、この影響をモロに受けているわけです。
確かに人口の減少分以上に労働人口が減っていますから、一部はニートなど働く意思がない状態になっている人もいるでしょう。しかし、慢性的な人手不足は彼が労働市場に出てこないからではなく、若者の絶対数が足りないのが主な原因なのです。
一方、建設業については、少し事情が異なります。こちらは必ずしも若い人だけという職場ではありませんが、こうした仕事は日本人はあまりやりたがりません。高齢者の場合には、年金をもらえている人も多く、あえてこうした仕事には応募しない人も一定数存在すると考えられます。
何より、このところ政府は公共事業を急激に増やしていますし、オリンピック特需でさらに建設需要が増加している状況です。これが、もともとの人手不足にさらに拍車をかけているわけです。
ホワイトカラーはまだ余っている
人手不足になれば賃金が上昇しますので、デフレ脱却には意味があるかもしれません。しかし、慢性的な人手不足が続いてしまうと、今度はそれが経済の停滞要因になってしまいます。企業にとっては事業を拡大したくても、人手を確保できずそれを断念するという事態が発生してしまうからです。
その一方で、ホワイトカラーの事務職については、かなりの余剰人員が存在している状況にあります。IT化は今後さらに進むことが予想されますので、こうした分野の労働者はさらに必要なくなってしまいます。
しかし、事務職で余剰となった人材が、外食の店員さんや建設作業員に転職するとは思えませんから、やはり人手不足の解消にはなりません。
政府ではこうした状況を打開するため、外国人労働者の受け入れを拡大しようとしていますが、これには反対意見も多く、スムーズには進まない可能性があります。
デフレと人余りから一転、今度は賃金上昇によるインフレと人手不足に苦しめられることになりそうです。