ソフトバンクグループ傘下の米通信会社スプリントとTモバイルUSは2018年4月29日、2019年をメドに合併することで合意に達しました。
ソフトバンクがスプリントを買収して以降、5年越しの交渉がようやくまとまったわけです。ソフトバンクは買収を実現するため譲歩を余儀なくされましたが、やむを得ない判断でしょう。
ソフトバンクは統合を優先し、経営権取得を断念
ソフトバンクは2013年、米第3位(当時)の通信会社であったスプリントを216億ドル(当時のレートで1兆8000億円)で買収しました。米国における通信市場は、ベライゾンとAT&Aの2強となっており、それにスプリント、TモバイルUSが続く図式となっていました。
ソフトバンクはスプリントの買収に続いて、TモバイルUSも買収する計画を立てていました。2社を合併させれば、トップ2社(ベライゾンとAT&A)と互角に戦える可能性が見えてくるからです。
しかし、この買収には米当局が難色を示し、一旦は買収は白紙に戻っていました。しかし、トランプ政権になって当局のスタンスが変わり、買収交渉は再開しましたが、今度は統合後の経営権をめぐって、TモバイルUSの親会社であるドイツテレコムとソフトバンクがなかなか折り合うことができませんした。
この間にスプリントTモバイルUSの立場は逆転し、TモバイルUSが3位に、スプリントが4位となっています。結局はソフトバンク側が折れ、ドイツテレコムが41.7%、ソフトバンクが27.4%を持つ形で合意に至りました。ソフトバンクは経営権の取得については断念し、統合による規模のメリットを優先します。
ソフトバンクにとっては増益要因となる
米国は先進国としては珍しく、今後も長期にわたって人口の増加が見込める国です。携帯電話の市場は、人口の増大にともなって確実な成長が見込めますから、かなり手堅いビジネスです。しかも米国の通信市場は世界最大級ですから、その一角を占めるということは、ソフトバンクにとって非常に重要な意味を持ちます。
経営権を取得できなくても、合併を実施するメリットはそれなりに大きいでしょう。
スプリントはソフトバンクが買収した時点では赤字を垂れ流している状況でしたが、リストラが進展し、ようやく利益体質になってきました。TモバイルUSとの合併することで、今後の業績には弾みが付くでしょう。
当然のことながら、新会社の業績はソフトバンクの決算に反映されますから、ソフトバンクは増益の可能性が高まります。
合併については当局の審査などで1年程度の時間が必要とされ、最終的に合併を実施できるのかは100%確実ではありません。しかし5年越しの交渉がようやく結実したことで、ソフトバンクのグローバル戦略が、あらたな段階を迎えたことは間違いないでしょう。