総合商社の伊藤忠商事がファミリーマートを子会社化すると発表しました。伊藤忠は1998年にファミマに資本参加して以来、グループ企業としてコンビニの運営を続けてきました。ここにきて、伊藤忠がファミマが子会社化に踏み切ることにはどんな事情があるのでしょうか。
グループ会社として関係を続けてきたが・・・
伊藤忠商事は2018年4月19日、現在、持ち分法の適用会社となっているユニ・ファミリーマートホールディングスを子会社にすると発表しました。1200億円を投じてTOB(株式公開買い付け)を実施。出資比率を現在の41.5%から50.1%に引き上げます。TOB実施後も株式の上場は維持する方針とのことです。
もともと伊藤忠はコンビニ最大手のセブン-イレブンとの関係が密接でしたが、伊藤忠がファミマに資本参加して以降、セブンは伊藤忠に対して一定の距離を置くようになりました(このあたりの経緯については過去記事「近すぎても遠すぎてもいけない、コンビニと商社の距離(前編)」を参照してください)。
ファミマと伊藤忠も資本関係はできたものの、あくまで関連会社ですから、ファミマの経営は、ある程度、独立した状況となっていました。しかもファミマは大型スーパーやコンビニのサークルKサンクスを運営するユニーと経営統合しており、現在ではコンビニからスーパーまでを擁する総合小売業となっています。
本来、小売店は卸である商社とは一定の距離感を保つ必要があります。資本関係が密接すぎると、親会社の商品しか扱わなくなり、商品力が低下する恐れがあるからです。こうした状況にもかかわらず、ファミマが伊藤忠の子会社になる決断を行ったことには、双方の経営事情が関係しています。
双方に事情があった?
ファミマはサークルKサンクスとの統合で店舗数ではトップのセブンに近づくことができました。しかし1店舗あたりの収益はセブンと比較すると大幅に見劣りする状況で、このままでは業績面でセブンに追いつくことは困難です。
こうした状況からファミマの経営陣は、スマホをベースにした金融サービスへの進出など、新しいアプローチを検討していますが、コンビニはこうした新規事業をあまり得意としていません。ここは総合商社のリソースを活用した方が得策と判断した可能性が高いでしょう。
一方、伊藤忠側にも事情があります。同社の2017年3月期における当期利益約3500億円のうち、コンビニ事業を含む食品部門によるものは700億円を超えており、稼ぎ頭となっています。伊藤忠はもともと繊維商社であり、資源にそれほど強いわけではありませんが、大手商社は皆、リスクの大きい資源分野よりも、食品など生活分野を強化するのが現在のトレンドとなっています。
ファミリーマートは経営統合によるリストラで利益を拡大できる局面にありますから、ファミマを子会社にしてしまえば、同社の利益をそのまま伊藤忠の決算に反映させることができます。
しかしながら、これは諸刃の剣となる可能性があります。従来なら、ファミマの業績が傾いても、伊藤忠にそれほどの影響は及びませんでしたが、今後はそうはいかなくなります。伊藤忠とファミマはよい意味でも悪い意味でも一蓮托生となったわけです。