経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. テクノロジー

フェイスブックのデータ不正流用事件は、プラットフォーマー終焉の予兆か?

 フェイスブックの創業者でCEO(最高経営責任者)を務めるマーク・ザッカーバーグ氏が米国議会で証言しました。8700万人にのぼる個人情報流出と大統領選挙のロシア関与について、同社に責任があることを認め、謝罪しました。

個人情報を利用し尽くすビジネス・モデル

 このところフェイスブックには多くの批判が寄せられていました。きっかけとなったのは個人情報の不正流用疑惑です。

 内部告発者の証言によると、英国のデータ分析会社ケンブリッジ・アナリティカが、フェイスブックのデータにアクセスする自己診断アプリを使った27万人とその友人の個人情報8700万人分を本人の許可なく入手し、そのデータが2016年の米大統領選でトランプ陣営の選挙活動に使われたということです。

 今回の件は、フェイスブックが直接、データを不正流用したわけではありませんが、個人情報を広範囲に扱うSNSという企業である以上、こうしたトラブルが発生することに対して一定の責任が生じると多くの人は考えています。

 当初、ザッカーバーグ氏は、フェイスブックには直接の責任はないとして強気の構えでしたが、議会証言にまで進展したことで、一転して謝罪に転じました。
 10日に行われた上院の公聴会に出席したザッカーバーグ氏は、普段とは異なり、スーツにネクタイ姿で登場。固い表情で、何度も水を飲むなど、かなり緊張した様子でした。これまで社会から賞賛を浴び続けてきた同氏にとっては、かなりのショックだったものと思われます。

 フェイスブックは利用者に詳細な情報ポリシーを提示した上で利用する仕組みになっており、理屈上、利用者はそれを受け入れた上でフェイスブックを使っているわけです。

 しかしながら、現実に同社の情報ポリシーをすべて読みこなしている人はいないでしょうし、1タップをもって承諾したと見なし、利用者の知らないところで情報を使って広告ビジネスを行うというやり方は、少々強引といってよいでしょう。

facebukku

プラットフォーマーの時代はいずれ終焉を迎える

 とりあえずザッカーバーグ氏は謝罪し、事態の改善を約束しましたから、少なくとも以前のような野放図なデータ利用は抑制されると思われます。しかしながら長い目で見た場合、今回の出来事は、フェイスブックに代表されるようなプラットフォーム・ビジネスの終わりの始まりとなる可能性があります。

 IT業界では、フェイスブックやグーグルといったプラットフォーム企業の存在を脅かす可能性を持つ新しい技術が育ち始めています。それはブロックチェーンに代表される分散処理技術です。

 ブロックチェーンはビットコインなどの仮想通貨に利用されたことで一気に注目を浴びたわけですが、この技術はあらゆる分野に応用が可能です。

 例えば自身の個人情報を分散台帳で暗号化して管理する仕組みが出来上がれば、個人情報は自分自身の手で安全に管理することできます。フェイスブックのような企業が独占的に管理してきた個人情報を自身の手に奪い返すことができるのです。

 顧客の個人情報を保有・管理せず、都度、個人からデータの提供を受ける形でシステムを運用するSNSが登場してきた場合、多くの人が新しいSNSに乗り換える可能性は十分にあるでしょう。

 当然、広告システムも変化します。

 個人が提供を許諾した情報の範囲でしか広告は表示されず、どの広告をクリックしたのかという情報も個人が管理する仕組みを構築することは不可能ではありません。問題は収益の兼ね合いと、利用者の利便性ですが、こうした障壁もたいていの場合、イノベーションが解決します。

 SNSが登場してから約20年が経過しましたが、そろそろ大きなパラダイム・シフトが発生するタイミングなのかもしれません。

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