民主党のヒラリー・クリントン前国務長官がいよいよ米大統領選挙への出馬を表明しました。民主党の本命候補が正式に出馬表明したことで、これから本格的な選挙戦が始まることになります。
クリントン氏は政策面で不安が
クリントン氏は2015年4月12日、インターネットのビデオ・メッセージを通じて2016年の大統領選挙への立候補を正式に表明しました。
民主党内では最有力候補ですから、予備選に勝利する可能性はかなり高いと考えられます。本選で共和党を破って当選することができれば、米史上初の女性大統領となります。
クリントン氏は、圧倒的な知名度と国務長官としての実績がありますし、選挙資金も豊富といわれています。予備選はもちろんこと、対共和党の本戦でも優位に立てる可能性があると考えてよいでしょう。
しかしながら、クリントン氏にもいろいろと不安材料があります。それは政策面です。以前の米国は、労働組合やマイノリティ、ウォール街などを支持基盤とする民主党と、資本家や保守層の支持を受ける共和党といった具合に、分かりやすい構図になっていました。
しかし、現在の米国は価値観が多様化しており、保守vsリベラル、労働者vs資本家といった形で単純に分けて考えることが難しくなっています。
米国は移民を数多く受けれていることから、白人はすでに少数派となっています。特に最近勢力を伸ばしているヒスパニック系の票をどちらが取り込むのかで選挙結果は大きく変わってくるのですが、彼等の票はなかなか予測ができません。
こうした状況を反映し、クリント氏が立候補を表明したビデオ・メッセージは何とも微妙な内容となっています。
全体的には米国の中間層を応援する内容ですが、同性愛者やヒスパニック系など、マイノリティも数多く登場させています。しかし、こうした面をあまりに強調しすぎると、今度は労働組合など、これまでの支持層からの人気を失う可能性があります。
またオバマ現政権との違いもはっきりしなくなるため、対共和党という点では苦戦する材料になるかもしれません。
ブッシュ氏も同じような悩みを抱える
ちなみに、共和党からはブッシュ元大統領の実弟ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事が立候補を表明しています。ブッシュ氏も、クリントン氏ほどではありませんが、似たようなジレンマを抱えているといわれます。
ブッシュ氏は中道なのですが、共和党の予備選で勝利するためには、保守派の得票がカギになります。しかし、あまりに保守的なスタンスを強調すると、今度は本戦で不利になる可能性もあり、そのあたりのバランスをどう取るのかがなかなか難しいのです。
対ヒスパニックという点では、ブッシュ氏の夫人はメキシコ出身ですから、非常に有利といえます。しかし、こうした家族構成も、保守層からどう評価されるかは未知数です。
さらにいえば、同じ共和党から、キューバ移民二世のマルコ・ルビオ上院議員も出馬を表明しています。ルビオ氏は選挙資金もブッシュ氏に比べれば貧弱ですが、何と言っても、移民二世でヒスパニック系というインパクトがあります。
しかも43歳と若く、非常に行動力のある人ですから、ひょっとすると大ブームを作り出すかもしれません。クリントン氏は元ファーストレディ、ブッシュ氏は大統領の弟というビックネームではあるものの、どうしても一世代前の人物という印象は否めません。
これまでの大統領選はある程度の流れが予想できたのですが、今回はなかなかそうもいきません。これは米国社会が複雑化していることの証明といってよいでしょう。ともかく、大統領選挙は何があるか分かりませんから、今後の展開には要注目です。