このところ、長期金利の低下が進んでいます。日本の長期金利は昨年4月の量的緩和策の発動をきっかけに0.9%近くまで上昇しましたが、その後下落が続き、5月に入ると0.6%を下回ってしまいました。
長期金利低下は今後の景気低迷を示唆?
長期金利が低下するということは、国債が買われているということを意味しています。日銀は昨年4月以降、国債を大量に購入する量的緩和を継続中ですから、金利が低下する原因は、日銀による国債の「買い」ということになるでしょう。
一方では別な解釈も成立します。長期金利は最終的に、その国の経済成長率に近づくといわれています。本来、景気が回復し物価が上昇してくれば金利も上がってくるはずなのですが、逆の動きになっています。
長期金利がゼロに近づいているということは、市場では日本経済は今後、成長せず、物価も上昇しないと考えていることになります。
もっとも、こうした金利の低下は日本だけの現象ではありません。米国でも欧州でも金利の低下が進んでいます。特に米国は順調に景気が回復しているだけに、なぜ金利が下がってしまうのか、多くの投資家がクビをかしげています。
ただ全世界的に見ると経済が好調なのは米国だけです。欧州は最悪期は脱しましたが、完全に回復軌道に乗ったとは言えない状況です。中国をはじめとする新興国は当分の間、低迷が続くでしょう。
いくら米国が好調だといっても、米国だけで前回の景気を引っ張ることは不可能です。米国は世界経済の中心地ですから、米国の金利低下は、全世界的に景気回復の足取りが遅いことを反映しています。
もしそうだとすると、日本の金利低下も、こうした世界経済の影響を受けてのものだと考えた方が自然です。
とりあえず様子を見た方が賢明
現在のところ、日本の株価は低迷していますが、米国の株価は堅調です。金利低下の影響が株高を演出する結果になっていますが、この状態は長くは続きません。
金利が示すように世界経済の成長鈍化に合わせて、米国株は下落するか、そうでなければ、金利の過度な低下が修正され、金利が上昇していきます。その場合には、米国株もさらに上昇していくでしょう。
おそらく日本株も同じような経過をたどる可能性が高いと考えられます。金利が高い状態が続き、米国株が下落するようであれば、日本株もさらに下落することになります。
一方、米国で金利の上昇が始まれば、いずれ日本の金利もじわじわと上昇します。もちろん日銀による国債の買いがありますから、その範囲は限定的ですが、ともかく、そうなった場合には、金利の上昇と株価の上昇が同時に発生することになるでしょう。
どちらに転ぶか分かりませんが、今、株式投資をしている投資家は、少し様子を見た方が賢明といえそうですでしょう。
株価がさらに上昇するのであれば、その傾向が鮮明になってから参戦してもまだ遅くはありません。一方、株価が一旦下落するのであれば、むしろ、下落したその後の方が、買いのチャンスとしては最適といえるでしょう。