太陽光発電などで生まれた電気を電力会社が買い取り、再生可能エネルギーの普及を目指す買取制度が頓挫しかかっています。
九州電力など電力各社が、新規の再生エネルギーの受け入れ中断を表明しているのですが、これにはどういった背景があるのでしょうか。
電力会社はトラブルが増加すると主張しているが
再生可能エネルギーは従来のエネルギー源とは異なり、発電コストが大幅に高いという特徴があります。そのままでは再生可能エネルギーを普及させることができませんから、政府では、再生可能エネルギーの普及を目指して「再生可能エネルギー固定価格買取制度」というものを設けています。
これは、個人や事業者が太陽光などを使って発電した電気を、契約期間中は電力会社が一定価格で買い取ってくれるというものです。これによって発電装置を設置する個人や事業者は安心して設備投資することができるわけです。
この制度によって多くの個人や事業者が再生可能エネルギーによる発電に参入しました。戸建ての住宅に住んでいる人の中には、太陽光発電システムを売り込む事業者から提案を受けたという人もいるかもしれません。
しかし、この制度において、どれだけの電気を買い取るのかは電力会社の裁量に任されています。電力会社では、予想以上に電気買い取りの要請が寄せられており、九州電力など電力各社は10月以降(九州電力は9月末以降)、新規受付を中断すると表明したのです(厳密には、事業者を中心とした10キロワット以上の大口の買い取りについて新規受け付けを中断。出力10キロワット未満の住宅用発電システムからの買い取りは継続)。
電力各社では、これ以上、新規の受け入れ行うと、送電網でトラブルが発生する確率が高くなると主張しています。ただ、電力会社はもともとも、自分達が発電したものではない電気の受け入れには強く反対してきました。また、こうした電力の融通が当たり前になると、これまで享受してきた地域独占のメリットが薄れる可能性が出てきます。
一部の専門家からは、買い取りを希望する個人や事業者がどの程度いるのかは、事前に分かっていたことであり、トラブルを理由に電力会社が新規受け入れを中断するのはおかしい、という意見も出ているようです。少なくとも電力会社にとっては、再生可能エネルギーを受け入れるメリットはなく、法律で決められたので、やむを得ず取り組んでいるというのが現実でしょう。
電力料金値上げとの関係性を憂慮した?
電力会社が新規受け入れを中断した理由は、当初からの消極性に加え、電力料金の問題があると指摘する声もあります。経済産業省では、現在、認定している再生エネルギー事業者すべてが発電を開始した場合、買い取り総額が現在の約4倍の約2兆7000億円となるという見通しを明らかにしています。
再生可能エネルギー買取制度では、発電した電気は電力会社が買い取るわけですが、電力会社がそのコストを負担するわけではありません。買い取りに要した金額は、そのまま利用者の電気料金に上乗せされます。
経産省の試算では、現在約225円となっている月額の利用者負担が、約4倍の935円に跳ね上がる見込みです。電力各社は、エネルギー価格の高騰や、原発のコスト増などで値上げに踏み切っていますが、実は、今後もう一段の値上げも検討しています。
そのような中、利用者の金銭負担がさらに増加するような状況は望ましくないと判断した可能性は十分にあります。
本来、採算が取れない再生可能エネルギーを本当に普及させたいのであれば、買い取りについて、国が責任を持つ体制が必要となります。責任の所在がはっきりしない現在の買い取り制度では、このような事態が発生することは、ある程度予想できたことといえるでしょう。