サイバーエージェントの藤田晋社長が、日本経済新聞のコラムで退職した社員に対して「激怒」した件が話題になっています。賛否両論様々なのですが、ビジネスマンとしてはどう捉えればよいのでしょうか?
藤田氏の発言の真意は?
ことの発端は、日本経済新聞のコラムで藤田氏が、退職社員のことをあえて「怒った」ことです。藤田氏によれば、その社員には事業の立ち上げを任せていたにもかかわらず、放り出す形になったとのこと。
しかも、その社員は以前、億単位の損失を出す失敗をしたことがあるのだそうですが、藤田社長がセカンドチャンスを与え、事業責任者に抜擢したのだそうです。
藤田氏は、従業員が辞めるのは自由だが、他社から転職のオファーがあったとしても、個人的な理由を優先して責任を放棄するのは、自己中心的だと非難しています。また他社からの引き抜きを防ぐために、あえてコラム上で「怒った」のだとしています。
当然ですが、この発言は、ネット上で賛否両論となりました。
従業員には、いつでも会社を辞める権利がありますし、自分が担当した仕事で損を出しても、意図的で会社を騙すつもりがないのであれば、原則としてその責任を問われることはありません。
したがって、原理原則の話でいけば、社長から転職についてとやかくいわれる筋合いはないということになります。
法的にはそういうことになりますが、実際の仕事の現場ではやはり、貸し借りや恩義、礼儀といった概念があり、それを無視することはできません。
藤田氏の肩を持つ人は、従業員といえども、そのあたりについてはある程度考えるべきだということなるでしょうし、従業員側の肩を持つ人は、藤田氏の発言はトップの発言としてどうなのだろうか、と疑問を抱いているわけです。
藤田氏がどのような意図でこの発言をしたのかは定かではありません。ネットのビジネスを知り尽くしている藤田氏ですから、敢えて拡散させることを狙って、同じようなことが起きないよう社内にクギを刺したというのが、自然な解釈でしょうか?
ただそうであれば、わざわざコラムを使わなくてもよいという考えもあり、100%そうとは言い切れない部分もあります。
トップの発言に感想を持っても意味がない
今の時代はネットですぐ話が拡散するので、メディアでの発言も意味合いが少し変わってきていますが、メディアでの発言で、従業員に対するグチや文句を言う社長というのは、実は少なくありません。
以前、日本を代表する携帯電話会社の社長が、同社が親会社をしのぐ会社に成長したことについて「社長はラッキーでしたね」と社内で発言した社員に対して、ビジネス誌のインタビュー上で批判したことがありました。
若い社員がちょっと口をすべらせただけですし、社内でそれとなく注意すればよいものを、わざわざ日本を代表するビジネス誌で批判してしまっては、その若手社員の立場がなくなってしまうことが想像されます。普通に考えれば「そこまでしなくても」という話です。
つまり何が言いたいのかというと、大企業のトップとはいえ、多くはただのサラリーマンであり、そんなものなわけです。
藤田氏はゼロから会社を立ち上げた起業家であり、サラリーマン経営者とはワケが違います。ただ面白くないという思いでは、この携帯電話会社のサラリーマン社長と同じだったのかもしれません。
ビジネスマンがこうした話を聞いて「社長はもっと人格者であるべきだ」などと言ってもあまり意味はありません。
少なくとも、表面的にいい顔をする人ではなく、そうした行動をする人物であると、メディア上で公表しているわけです。どんな人物なのか周囲から分かるだけマシと考えた方がよいでしょう。
本当のブラック企業のトップは周囲に対して非常に優しいという話もあります。トップの発言は、感想など持たず、ひとつの情報源として考えるのが妥当です。