経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 投資

投資でやってはいけないこと(前編)

 年金2000万円問題を受けて、ネット証券の口座開設申し込みが急増しているそうです。基本的には年金だけで老後の生活をカバーするのは困難ですから、理由はともあれ、投資に対する意識が高まるのはよいことだと思います。しかしながら、長期で安定的な運用を行うとはいっても、投資にリスクはつきものであり、中途半端な気持ちでは成功しません。

 預金マインドから投資マインドへの切り換えが出来ていない人は投資で失敗する可能性が高いですから、この点には十分に注意する必要があります。以下では、投資でやってはいけないこと6カ条を列挙し、どうすれば投資で成功できるのか解説してみたいと思います。当たり前のことだと思うかもしれませんが、多くの人が、この当たり前が実践できずに損失を抱えてしまいます。

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その1 どの投資手法がよいのか最初から決めてかかる

 筆者は20年以上にわたって継続的な株式投資を実践し、億単位の資産形成に成功しました。筆者の方法は、マクロ経済の動向を見極め、成長が見込める企業に長期的なスパンで投資するというものですが、ベストなやり方を見つけ出すまでには、紆余曲折がありました。人にはそれぞれ自分に合った投資のやり方があり、それを見つけ出すことが重要だと筆者は考えています。

 投資本などを読んだだけで「この方法がベストだ!」といって決めてかかる人を見かけますが、これはあまりよい傾向ではありません。どんな手法であっても人によって、合う、合わないがあるので、やはり試してみないと本当のところは分からないのです。投資の世界はスポーツや習い事と同じで経験値がモノを言います。最初のうちは勉強代だと思っていろいろなやり方を試した方がよいでしょう。

その2 他人の投資手法を批判したり、投資手法について論争する

 投資手法についてやたらと論争したり、他人の投資手法を批判する人をよく見かけますが、こうした人たちはほぼ100%投資で成功していません。

 投資というのは勝ち負けがハッキリしたゲームであり、「勝ってナンボ」の世界です。どれだけ立派な理論を並べて相手を論破したところで、利益を得られなければ実績はゼロです。厳しい世界ではありますが、逆に言えば、一切の不公平もありませんから、チャンスは全員に平等です。。

 有能な投資家であれば、他人の投資手法は参考にしますが、それを否定する必要もなければ、無条件で受け入れる必要もありません。情報として重要だと思えば取り入れればよいですし、そうでなければ取り入れないだけの話です。この割り切りができなければ、投資で成功するのは難しいでしょう。

その3 投資経験のない人の意見を参考にする

 繰り返しになりますが、投資というのは経験がモノを言う世界です。才能のある一部の人を除いて、経験を積んだ人には「絶対」に勝てないと思ってください。その点からすると誰にアドバイスを求めるのかという話は非常に重要です。

 野球がうまくなりたいと思っている人は、野球がうまい人からアドバイスを受けるのが普通です。ピアノがうまくなりたいと思っている人は、ピアノが上手な人からレッスンを受けるのが当たり前です。学歴が高く、ピアノのことは詳しいが、弾いたことがないという人や、野球には詳しいがキャッチボールもしたことがない、という人から教えを請う人はいないはずです。

 ところが投資の世界では、こうした光景が日常的に見られます。投資のことは知識としては知っているものの、自身では投資経験がない人からのアドバイスを真剣に聞いてしまう人が実に多いのです(具体的にどのような人のアドバイスがこれに該当するのかはあえて言いませんが・・・)。
 常識的に考えて、これでは成功するはずがありません。人からアドバイスを受けるのなら、まずは実績を上げた人からというのは、どの世界においても共通の鉄則です。

次回に続く

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