経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 経済

中間搾取や下請けイジメをやめれば、日本経済は復活できる

 日本はバブル崩壊以降、多くの経済政策を実施してきましたが、どれも目立った成果をあげていません。あらゆる経済政策が効果を発揮しない理由のひとつとなっているのが、日本経済の制度疲労です。具体的に言えば、中間搾取のみを目的とする企業の存在や、重層的な下請け制度がこれに該当します。

中間搾取を目的とした企業は要らない

 日本では人口1000万人あたり約28万の事業所が存在していますが、米国は24万しかありません。日本は人口に比して会社数が多いということですが、その理由のひとつとなっているのが中間マージンを取ることだけを目的にする事業会社の存在です。

 企業は得意な分野に特化した方がよいので、機能ごとに階層分離すること自体は悪いことではありません。あるメーカーが部品の製造を下請け企業に依頼するというのは諸外国でもよく見られる光景です。

 しかしながら、健全な市場メカニズムが働いている国の場合、2次下請け、3次下請け、4次下請けといった重層構造になることはありません。また、付加価値の低い製品の製造を請け負う企業は、合併などによって市場シェアを高め、元請け企業との交渉力を高めようとします。

 また、一定価格以下の仕事は利益が出ないので断ってしまいますから、製品を供給する企業数が最適化され、価格は一定以下には落ちないことがほとんどです。

 ところが日本の場合、こうしたメカニズムは働かず、下請け企業はいつまでも価格競争力を持てないままとなっています。これを良いことに、元請け企業は際限のない値引き要求を続けるという図式ですから、日本の賃金が上昇するわけがありません。

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仕組みを変えれば賃金もすぐに上昇する

 流通も同様です。商品をすみずみまで流通させるためには、1次卸、2次卸といった具体にある程度の階層構造になるのはやむを得ませんが、日本の場合には、度が過ぎるケースがかなり見受けられます。海外の場合、メーカーに直接掛け合えば製品を売ってくれることもよくありますが、日本では、業界の和を乱すといった理由で、最終顧客に直接製品を販売しないメーカーも多いのです。

 こうした状況が行きすぎると、中間搾取だけを目的とした企業が多数、温存されることになります。実際、元請けが受けた仕事を下請けとして請け負い、その仕事を孫請けに丸投げするだけの企業も多いのが現実です。

 中間マージンを取るだけの企業が生み出す付加価値は低く、薄利多売にならざるをえませんから、従業員の賃金も限りなく安くなります。しかも、こうした企業は中間生産物しか生産しませんから、GDP(国内総生産)には直接的に貢献しません。

 このような企業がないと仕事を失う人が出てくるという主張がありますが、そうではありません。中間搾取を目的とする企業が、別の製品やサービスの提供にシフトすれば、その分だけGDPが増え、国民全体の所得も増加しますから、賃金もあっという間に上昇するでしょう。

 こうした企業を退出させ、市場を活性化するためには、企業の統廃合や労働者の転職が促進されるよう、流動性を高める政策が必要となります。雇用の安定性は失われますが、最終的には豊かな暮らしが実現できますから、ここは国民的な決断が必要であると筆者は考えます。

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