しばらく膠着状態が続いてた為替相場が再び動き始めました。
8月後半からドルは上昇を始め、8月末には104円を突破、9月に入ると一気に106円まで円安が進みました。
この動きは、今後、予想されている本格的な円安トレンドの本格的な始まりとの見方が一部にはあります。最終的なトレンドについて現時点で断定することは難しいのですが、目先についてはドル高の材料が揃っているため、当分の間、円安の流れが続くと考えるのが妥当でしょう。
ただ、最終的な為替相場の動向は、米国の金利動向に大きく依存しています。FRBによる金融政策次第では、再び円高に戻る可能性も否定できません。
米国の利上げ観測をきっかけにドル買いが先行
現在、ドル高になっているもっとも大きな要因は、米国の利下げ観測です。
足元の市場を見ると、長期的な成長率の鈍化予想や、ウクライナ情勢、欧州経済の停滞などから、安全資産である米国債が買われ、金利はむしろ低下しています。
しかし、米国は順調に景気が拡大しているという状況に変わりはなく、市場ではいつFRBが利上げを行うのかに注目が集まっています。
FRBのイエレン議長は、慎重な人ですので、利上げについて前倒しすると明確に発言しているわけではありません。
しかし、FRBの一部メンバーが早期利上げを主張するなど、徐々に利上げ前倒しの雰囲気が高まっています。市場ではこうした状況から、徐々にドルを買う動きが活発化しているわけです。
この動きに拍車をかけているのが、欧州の景気低迷とウクライナ情勢です。
欧州ではこのところインフレ率の低下が大きな問題となっており、一部からはデフレに逆戻りするリスクも指摘されるようになっています。
ECB(欧州中央銀行)はすでにマイナス金利政策を導入していますが、近い将来、量的緩和策に踏み切らざるを得なくなるとの見方が大半です。
ECBが量的緩和を実施すれば、さらにユーロ安・ドル高が進むことになるでしょう。ウクライナ情勢の解決が長引けば、さらにユーロ売りの材料となります。
目先はともかく、長期的な円安トレンドになる可能性は高い
日本では、これまで、一本調子で円安が進むとは考えない投資家が多かったことから、円買い・ドル売りのポジションが溜まっていました。しかし、円安がさらに進むという状況になると、これらの投資家は損失を避けるため、一斉にポジションを解消する可能性が高いと考えられます。
こうなってしまうと、円安がさらなる円安を呼ぶ展開となるため、当分の間、この動きが継続することになります。
しかしながら、今後、不可逆的な円安が進むのかという点については、まだ明確に予想することはできません。
米国では早期利上げ観測が高まっていますが、イエレン議長自身は、金利について明確なコメントは出していないからです。市場がもし先走り過ぎているのだとすると、どこかのタイミングで一時的に円高が再開する可能性も残っています。
ただし、日本はすでに慢性的な貿易赤字体質となっており、常に一定水準のドル買い需要が存在しています。もし日本の物価上昇が今後も進展するようであれば、それに歩調を合わせるように円安が進む可能性は高いでしょう。
少なくとも、長期的なトレンドがいつ始まってもおかしくない段階に入っていることだけは間違いありません。