社会問題化しつつある飲食店の無断キャンセルについて、経済産業省が対策に乗り出しました。無断キャンセルは飲食店にとって死活問題ですから、十分な対策が必要ですが、こうした問題が発生する背景には日本経済の弱体化という深刻な現実があります。
経済産業省が対策レポートを公表
経済産業省は2018年11月、飲食店における無断キャンセルへの対策をまとめた「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」を発表しました。
同省では、無断キャンセルの被害額は、推定で年間2000億円に達すると試算しており、もはや事業者単独の問題ではないと指摘しています。
対策レポートでは、基本的に無断キャンセルがあった場合、お店側は顧客に対してキャンセル料を請求できることが示されています。具体的なキャンセル料の水準としては、コース料理を予約した場合には全額、席のみを予約した場合には、顧客の平均単価が基準となるそうです。
これまでも法律上は、キャンセル料を請求することは可能でしたが、一種のガイドラインという形で基準が示さたことで、店舗側も請求しやすくなるでしょうし、利用者側のモラル向上にもつながるでしょう。
一方、飲食店側は、キャンセルした場合にどのようなペナルティが発生するのか、事前に示す必要があります(いわゆるキャンセル・ポリシー)。また無断キャンセルが発生しないよう店舗は顧客に対して、事前連絡を徹底する必要があるとも指摘しています。
根底には日本経済の弱体化という問題がある
諸外国では、事前にクレジットカード番号を顧客から取得し、キャンセル料を引き落とすケースもありますが、そうした措置を取るお店はごく一部です。大半の店舗は日本と同様、予約を受け付けるだけで、無断キャンセル対策は実施していません。
諸外国では無断キャンセルが大きな社会問題にはなっていないのですが、その理由は経済状況の違いと考えられます。
日本では消費者の実質賃金の低下が続き、経済的に余裕がなくなっています。このため、できるだけよい条件の店を探そうと複数の予約を同時に入れる人が後を絶ちません。また、飲食店に対する顧客の価格要求が厳しく、店舗側はかなりの薄利を余儀なくされていますから、店舗側のダメージも諸外国よりも大きくなります。
通常、経済がしっかり回っていれば、飲食店は多少のドタキャンを考慮しても利益が出る水準の価格設定ができるはずですので、今の日本はかなり特殊な状況にあると考えた方がよいでしょう。
キャンセル料を可能な限り取るというのは、当面の対策ということになりますが、最終的には、豊かな経済を実現できないと根本的な解決は難しそうです。