加谷珪一の金利教室 第3回
前回の記事では、金利というのは、自由になる時間を購入するための代金であるという話をしました。例として取り上げたのはDVDのレンタルでしたが、お金の貸し借りの場合には、金利と時間の関係がより密接になってきます。
金利は失った時間を金額換算したもの
DVDと違い、お金は持っているだけでは劣化しません。つまり、お金のレンタル料の中には、商品が劣化することへの対価は含まれていないことになります。では商品が劣化しないにもかかわらず、なぜお金を借りると金利が発生するのでしょうか。
それはお金を貸した側は、その期間分だけ機会損失が発生するからです。お金のレンタル料、つまり金利というものは、お金が手元にないことによる機会損失を穴埋めするというニュアンスがより強くなってくるのです。
もし、お金が手元にあれば、人はそれを事業や株式、不動産などに投資し、お金を増やすことができます。しかし、誰かにお金を貸してしまうと、貸した人は、お金が手元になくなるので、お金を増やすことができなくなります。
本来、得ることができたはずの収益を得られないという点で、お金を貸した人は確実に損をします。金利というのは、この機会損失を埋めるための手当てなのです。
お金を借りた人から見れば、コストを払って支払いまでの時間を買い、その間に運用する機会を得たことになります。つまり、運用する機会というのは、コストを払えば獲得できるわけですが、これを商品化したのが住宅ローンに代表されるローン商品というわけです。
ローンを組むということの本当の意味
金利を払ってローンを借りた人は、借りたお金をすぐに返済する必要はありません。金利さえ払っていれば、10年後や20年後に返済すればよいのです。
例えば、値上がりが見込める不動産があり、手元には大きなお金がないと仮定します。そして、今、その物件を買わなければ、確実に値段が上がってしまいます。このような時には、金利を払ってローンを組み、不動産を買えるだけのお金を調達するという選択肢が出てきます。
5000万円のお金を借りて不動産を購入し、10年後か20年後に7000万円で売却したと仮定します。銀行に返済する必要があるのは、借りた5000万円と金利分だけすから、残りは不動産を買った人の利益となります。
つまりここでローンを組んだ人は、10年もしくは20年という時間について、金利を払って買ったことになります。ローンと聞くとお金がないので利用するというイメージが強いと思いますが、むしろ大事なことは時間を買うことなのです。
金利というのは時間をお金に換算したものであり、この感覚が投資においては非常に重要となります。次回以降はこうした金利の特徴についてさらに詳しく解説していきます。