加谷珪一の投資教室 実践編 第19回
株式投資で大きな富を得る人がいる一方で、参戦した人の8割が損をしているともいわれます。投資で成功した人の多くは、相場が大きく動いている時に利益の大半を稼ぎ出しています。
逆に言うとうまく稼げない時期も多く、成功者ほど、こうしたタイミングではあまり売買は行っていません。動くタイミングを間違ってしまうと、よほどのことがない限り大きな利益は得られないというのが現実なのです。
全体の利益の大半は特定期間に集中している
2003年から2007年の株価高騰の際、短期トレードで大きな利益を上げる個人投資家が続出しました。しかし、その何割かはリーマンショック以降、よい成績を上げられていません。
その理由は、短期的な値動きだけで売買するといっても、現実には相場全体の上昇による効果が大きいということを認識していなかったからです。
上昇局面でうまくいった短期売買の手法が下落局面でも通用する保証はありません。一部の投資家はこの事実に気付かず、下落相場でも同じように短期売買で利益が上げられると考え、損失を拡大させてしまったわけです。
今回のアベノミクス相場でも、いわゆる「億り人」が続出しましたが、今後、相場の潮目が変わった時には、一部の投資家は資産を減らしてしまうでしょう。
短期の投資でも長期の投資でも、相場全体の動きを捉えることが極めて重要であり、これが分かっている投資家は、相場が低調になると一旦、投資を休みます。場合によっては数年以上、様子を見て、再び相場が動き始めてから本格的な投資を再開するのです。
市場が動く時に大きく稼いで利益確定を行い、相場の調子が悪い時には休む、というのが、平均以上のリターンを確保するための王道です。機関投資家と異なり、個人投資家は休むという選択肢を選ぶことができるわけですから、この特権を最大限利用しない手はありません。
相場の波に乗れるのかが成否を決める
実はこうした話は投資本やマネー誌にはあまり出てきません。成功した投資家としては、ただ相場の波に乗って利益を上げたとは言いにくいでしょう。
また、ほとんどの読者は「真実」を求めておらず、どうすれば儲かるのかという、目先のテクニックを知りたがります。このためメディアの編集方針もその方向に偏っていくことになります。
成功した投資家があまり言いたがらないことがもうひとつあるのですが、それは、利益の大半が特定銘柄に偏っているという現実です。ネットバブルがピークだった時には、ライブドアで大儲けした投資家も多かったのですが、利益のほとんどをライブドアで稼ぎましたとは、確かに言いにくいかもしれません。
つまり、成功している投資家の多くは、ある特定の時期に、ある特定の銘柄への投資によって利益の多くを稼いでいる可能性が高いのです。
ここで得た利益をうまく保持し、次の相場に備えることができた投資家だけが生き残っているわけです。相場の潮目が変わっても、同じような投資をむやみに継続していた投資家の大半は資産額を減らしているはずです。
筆者自身も、得た利益の多くは特定の時期に集中していますし、銘柄についても1銘柄とは言いませんが、かなり絞られてくるというのが現実です。結局のところ、相場の波にうまく乗れるかどうかで勝負は決まってしまうのです。