コンビニ経済学 第9回
前回、解説したように、セブン-イレブンが圧倒的な収益力を持つのは、先行者メリットを最大限生かす経営を続けてきたからです。一方、同社が魅力的な商品を提供しており、それが顧客満足につながっているのも事実です。しかしながら、セブンの高い商品力も、実は先行者だからこそ実現できることでもあるのです。今回はそのあたりのカラクリについて解説したいと思います。
うまく売れば総菜類の利益率は極めて高い
セブンは他社と比較して高い商品力を持っているといわれています。その傾向がもっとも顕著に出ているのが、弁当やおでん、総菜といった商品でしょう。
飲料や菓子といった加工食品は、メーカーとの交渉で決まった仕入れ価格によって利益率が一意的に決まってしまいます。しかも、単価はそれほど高くありませんから、全体の利益に大きく貢献するわけではありません。しかしながら、こうした定番商品がないとコンビニとしての意味をなしませんから、これらは必要不可欠な商品でもあります。
コンビニの利益を最大化させるためには、こうした定番商品に加え、利益率の高い弁当や総菜をうまく販売することが重要となってきます。各社が弁当に力を入れているのはそのためです。
しかしながら、こうした弁当類や総菜といった商品の比率を高めることはそう簡単ではありません。これらの商品の賞味期限は極めて短く、商品が売れ残ってしまえばすべて廃棄しなければなりません。廃棄が多いと、店舗の収益を一気に悪化させてしまいます。
有利な立地の店舗を持つ企業は商品力も高められる
つまりこうした鮮度の高い商品群は、確実に来客数が見込める店舗でなければ、大量に揃えることが難しいのです。ここでセブンが持っている高い集客力が生きてくることになります。
もともとの来客数が多いので、セブンは思い切って弁当や総菜類を大量に仕入れることができます。単価の高い商品の比率が上がりますから、店舗の売上高の絶対値もさらに上昇します。また、こうした商品がたくさん揃っていると、顧客はもう1品ついで買いをする確率が高まりますから、さらに売上高も拡大していきます。
このように、もともと来客数の多い店は、魅力的な商品を投入しやすく、それがさらなる売上げの拡大につながります。しかし来客数が少ない店はこうした思い切った施策が打てず、結果的に商品力を下げてしまい、売上げも低迷するという悪循環になってしまいます。
ファミリーマートやローソンが、セブンのような商品展開できないのはこのような理由からです。もちろん両社も商品開発にはかなり力を入れているのですが、こうした事情からセブンに追いつくのが難しいという状況が続いているのです。