加谷珪一の知っトク経営学 組織編 第1回
【組織論はなぜ大事なのか】
これまでの「知っとく経営学」では経営学の基礎や経営戦略論を中心に解説してきました。ここからは経営学のもう一つの柱である組織論に移ります。
ミクロの組織論とマクロの組織論
企業の成長には戦略という概念が欠かせません。経営学は、労働者の管理という基本的なところからスタートし、組織の問題に視野が広がり、やがて戦略の分野に拡大していきました。
戦略と組織は密接に関係していますから、経営学の分野でも、組織論と戦略論は、共に主要なテーマとなっていま。戦略と組織は常にセットで考えた方がよいでしょう。
組織論には大きく分けて二つの流れがあります。一つは、組織を構成する個人の心理や行動について分析するミクロ的なもの。もうひとつは集団としての組織を分析するマクロ的なものです。
ミクロの組織論とマクロの組織論は、分析する対象や手法が大きく異なります。
ミクロ的な組織論は、個人の欲求がどこからやってくるのか、どのようにすればモチベーションが保てるのかといった内容が中心となりますから、場合によっては心理学や自己啓発の分野に近くなってきます。
一方、マクロ的な組織論は、組織全体がどのような構造になっているのか、どのような意図でデザインされているのかといったテーマを扱います。
マクロ的な組織論が理解できれば、役職というものがなぜ存在しているのか、あるいはそれがどのような役割を果たしているのかといったことについて理解できるようになります。組織が理解できれば、組織の動かし方についてもおのずとはっきりしてくるでしょう。
組織が分かれば出世もしやすくなる?
少し話はそれますが、仕事はそこそこできるのに、なぜか出世が下手という人をよく見かけます。このような人は、実は自分が属している組織のことをあまり理解していません。
組織を構成する個人と、組織全体としての意思決定のメカニズムは異なります。個人の感覚を組織に持ち込んでしまうと、大きな判断ミスをしてしまいます。
組織論という視点があれば、自分の会社の組織を、より客観的に眺めることができるようになり、組織内でどのようなメカニズムが働いているのかについても分かるようになります。
経営者というのは常にこうした思考回路で意思決定を行います。組織のどのボタンを押すと、どのように組織が動くのかを熟知した人が、組織のトップに立つことができるのです。
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