お金持ちを科学する 第1回
世の中では漠然と「お金持ち」あるいは「お金儲け」が語られていますが、こうした曖昧な認識のままでは、お金持ちになるのは難しいでしょう。
お金儲けについて科学的に理解するためには、まず、お金持ちと呼ばれる人がどのような人たちなのか分類・整理する必要があります。
資産と所得は別の概念
お金持ちに関する誤解でもっとも多いのが、「毎年の所得が多いこと」と「資産をたくさん保有していること」、さらには「会社や地域での社会的ステータスが高いこと」を混同してしまうことです。
一般的には、所得の多い人は資産額も多く、毎年の所得と資産額はほぼ比例しています。また、社会的なステータスが高いと、たいていの場合、所得も多くなりますから、中間層までの世界であれば、これら3つの項目は相互に関連しているとみてよいでしょう。
しかしながら資産の額がさらに大きくなってくると状況が変わってきます。
毎年の所得はそれほどではなくても、巨額の資産を持つ人が出てくるからです。この手の話でよく引き合いに出されるのは、ソフトバンク社長の孫正義氏と、日本マクドナルドやベネッセホールディングスのトップを務めた原田泳幸氏でしょう。
ふたりとも日本を代表する経営者であることは間違いありません。しかしながら、ソフトバンクの孫社長の役員報酬は1億3900万円で、上場企業のトップとして特別に高いというわけではありません。一方、原田氏のベネッセにおける役員報酬は4億8000万円でしたから、会社から受け取る報酬という意味では原田氏の方が圧倒的にリッチということになります。
同じ社長でも状況はまったく異なる
しかし、現実はまったく異なります。孫氏は、自らがソフトバンクのオーナーとなっており、同社株を2割以上保有しています。このため、資産総額は2兆円に迫る状況であり、世界でも屈指の超富裕層ということになります。
原田氏も、アップル日本法人社長時代や日本マクドナルド会長時代に得ていた高額報酬のかなりの部分を貯蓄していると思われますので、10億から数十億の資産を持っているかもしれません。しかし、孫氏の資産額と比べれば、比較の対象にすらなりません。
このレベルになってくると、年間の所得がいくらなのかということよりも、資産額がいくらなのかということがより重要となってきます。
さらに比較問題として例をあげれば、一般的な上場企業の社長は、数千万円から1億円程度の年収しかありません。しかも日本は年功序列ですから、若いうちは、ごく平凡なサラリーマンの年収しかなかったはずです。同じ上場企業の経営者という意味で、社会的な地位は近いかもしれませんが、各人が置かれている経済的状況は天と地ほど違うわけです。
以後の記事でも折に触れて説明していきますが、お金儲けを科学にするにあたって、所得と資産の違いを認識することは極めて重要です。