経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 経営論

スタッフとラインの違いを認識していますか?

加谷珪一の知っトク経営学 組織編 第3回
【スタッフとライン】

 組織というものは、基本的に上下関係で動いています。どんな組織にも、何らかの形で、上から下への指揮・命令系統が存在しており、それに沿って組織のオペレーションが行われます。
 しかしながら、日本のような組織の場合、誰が最終決定権を持っているのか曖昧なケースがあり、これが組織の機動力を失わせる原因のひとつになっています。

スタッフとラインの違い

 組織がそれほど大きくなければ、指揮・命令系統は単純なピラミッド型でうまく機能します。トップに立つリーダーがすべてを把握し、それぞれの部門ごとに上級管理職に指示を出し、上級管理職は、その下の管理職に、そして最終的には全社員に指示が行き渡ることになります。

 このように、上から下に指揮命令系統が展開するピラミッド型の組織のことを経営学では「ライン型組織」と呼びます。一般的な企業はライン型の組織になっていることがほとんどです。

 しかし組織の規模が大きくなってきたり、取り扱う業務が複雑になってくると、単純なピラミッド型組織はいろいろな問題を抱えてくることになります。最初に直面するのは、上に立つリーダーがすべてを把握できなくなることです。

 社長などトップマネジメントになると、営業、技術、マーケティング、人事など、あらゆる分野にわたって部下に指示を出す必要に迫られます。
 小さな組織であれば、一人で報告を受け、判断を行い、指示を下すという一連の作業を実施できますが、組織の規模が大きくなってくると、そうもいかなくなってきます。トップマネジメントの時間が確保できず、これが組織のボトルネックになる可能性が出てくるわけです。

 そこで、規模の大きい組織では、意思決定者をサポートするための人員や組織というものが配置されることになりますが、それがいわゆるスタッフ部門です。スタッフ部門を備えた組織のことを「ライン・アンド・スタッフ組織」と呼びます。
 一般的な企業では、経営企画室や調査部といった部署が典型的なスタッフ部門です。部署として独立していなくても、部長や課長を補佐する役職が存在する企業もあるでしょう。

linesstaff

権限が曖昧な組織ではこの制度は逆効果になる

 スタッフ部門の仕事は、意思決定権を持つ人をサポートすることであって、自身が決断を下すことではありません。しかし、トップは極めて多忙であり、すべての事項について自身で判断する時間がないこともあります。このような場合には、スタッフ部門の人間に事実上の意思決定をゆだねるケースが出てくるわけです。

 このためスタッフ部門の人間は、場合によっては、ライン上の管理職よりも、実質的に強い権限を持つことがあります。しかしながら、これが行き過ぎてしまうと、組織には多くの弊害が発生します。

 スタッフ部門の暴走が極限まで進んでしまったのが旧日本陸軍でしょう。

 軍には参謀という名称のスタッフがおり、指揮官の情報収集や意思決定を支える仕組みになっています。しかし参謀が暴走してしまうと、あたかも指揮官の命令であるかのように、自身の考えをラインに伝達し、組織を動かすことができてしまいます。ラインの各責任者は、上官ではなく参謀の顔色を伺うようになり、組織のオペレーションが混乱します。

 太平洋戦争末期の日本では、常識では考えられないような、お粗末極まりない作戦が多数実施され、多くの兵卒がそのために命を失いました。スタッフとラインがうまく機能するためには、誰にどの権限があるのかを明確にする必要がありますが、日本のような社会風土においてはこのあたりが極めて曖昧です。

 こうした組織にスタッフとラインの制度を持ち込むと、最悪の結果をもたらしてしまいます。誰が意思決定者が分からないという組織の弊害は、今の日本でもあまり変わっていません。日本企業の国際競争力の低下は、こうした部分も大きく影響しているはずです。

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