経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. テクノロジー

情報キュレーションのグノシーが上場。その意味は?

 スマホ向けのコンテンツ・キュレーション・アプリを提供するグノシー(Gunosy)が4月28日に上場します。同社の法人化は2012年11月ですから、わずか2年版でのスピード上場となります。

 コンテンツ・キュレーションのサービスは、従来メディアに代わる新しい情報経路として非常に注目されていましたが、どのように収益化を実現するのかが課題でした。
 同社が収益化のメドを付けたことで、スマホのキュレーション・メディアもビジネスとして成立することが明らかになったわけです。

累計のダウンロード数は800万
 グノシーの最大の特徴は、利用者の好みに応じて配信するコンテンツを変えられるという点です。同社のシステムは、サービス利用者のツイッターでのツイート内容やフェイスブックの情報、はてなブックマークの情報などを分析、独自のアルゴリズムを使って各人の好みを判断し、本人にもっとも最適化されたコンテンツを配信します。

 利用者の感想は、非常にかゆいところに手が届くといったポジティブなものもありますし、同じような情報ばかりが配信されて面白くないなど、様々ですが、パーソナライズしたコンテンツを配信するという点では一定の水準に達したと考えてよいでしょう。

 同社は、ベンチャーキャピタルやKDDIなどから相次いで出資を受けており、上場前の段階ですでに30億円近い資金を調達しました。

 豊富な資金を使ってテレビコマーシャルなども積極的に展開しており、同社の知名度は上がってきています。現在、同社のアプリの累計ダウンロード数は800万を突破しているそうですが、重複した利用者の可能性を差し引いても、メディアとして一定の立場を築いたと考えてよさそうです。

gunosiphot

広告媒体として十分に機能することが明らかに
 現在、同社の収益源はほとんどが広告となっています。グノシーの画面には記事と並んで広告が表示され、クリックあるいは閲覧されると課金されます。配信されるニュースの中にも同様に広告が挿入されています。

 閲覧するツールがスマホになっただけで、基本的に従来のネット媒体と大差はなく、スマホになったからといって仕組みが変わったわけではありません。

 同社の直近の売上高は約3億6000万円でしたが、最新の半期決算では売上高は約13億円と急増しています。通期では30億円に達する可能性もあるので、広告媒体として急速に収益化が実現できていることが分かります。

 これまでスマホを中心としたキュレーション・サービスは課金が困難という懸念がありましたが、少なくとも、同社のようなマス向け媒体であれば、十分に広告媒体として機能することが明らかになりました。
 グノシーの成功は、こうしたキュレーション・サービスの普及に弾みがつくきっかけになるかもしれません。

 キュレーション・サービスが有力なメディアに育つのかどうかは、最終的にはコンテンツ次第ということになります。ユニークな情報を提供するニッチなサイトにどれだけ収益を分配できるのかで、コンテンツ調達の幅は変わってくるでしょう。

 コンテンツ提供者への利益還元が小さいと、結局は一定の体力のある大きな情報提供者だけということになってしまい、テレビ局など従来のマスメディアと大差がなくなってしまう可能性もあります。

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