総務省が高校生を対象に行ったネット・リテラシーの調査結果は非常に興味深いものでした。ネットの利用時間が短い人ほどリテラシーが高いのだそうです。ネットを見ないほど、ネットの使い方がうまくなるというのは、何とも皮肉な結果です。
利用時間が長い人ほどのめり込みやすい?
総務省は、3年前から高校生のネット利用実態について調査を行っています。全国の高校1年生に約3700名に対して、アンケートを送り、ネットの利用実態に書き込んでもらっています。
この調査では、ネット上の違法コンテンツや有害コンテンツを適切に処理できる能力や、セキュリティ対策を実施できる能力をネットのリテラシーと定義しています。具体的には、違法コンテンツをうまく見分けたり、不必要なファイルをダウンロードしないよう工夫できる人のことを指します。
ネットのリテラシーとネットの利用時間には明確な相関がありました。ネットのリテラシーがもっとも高かったのは、1日あたりのインターネット利用時間が1時間~2時間というグループでした。
次に高いのは1時間以内というグループで、ここからは利用時間が延びるほどリテラシーが低下していく傾向が見られます。6時間以上というグループでは、リテラシーは大幅に低下してしまいます。
簡単に言えば、ネットを使わない人ほど、リテラシーが高いという矛盾した結果なのですが、よく考えてみれば、この結果も納得できます。
ネットの利用時間が長い人は、ネットに対して、かなりめり込んでいる可能性が高いと考えられます。ネットにのめり込んでしまっている人が、ネット上のリスクに対してあまり敏感でないのは、ある意味で当然のことといえるでしょう。
これは睡眠時間に関する調査項目からも分かります。
6時間以上、ネットを使っている人は、睡眠時間が短くなる傾向が顕著です。6時間以上ネットを見ている人で、一般に適切と考えられる7時間から9時間程度の睡眠を取っている高校生は14.4%と、他のグループに比べて大幅に少なくなっています。また3時間以上5時間未満という人の割合が突出して高いという特徴もあります。
何事もそうですが、ひとつのことにハマりすぎない方が、よいということです。
ネットなのに流行遅れな人たち
ネットの世界では時々、面白い現象が発生します。ネットは紙媒体に比べて圧倒的にリアルタイム性に優れているはずです。しかし、ネットの掲示板やツイッターなどでは、紙媒体ですら、半年や10カ月も前に取り上げられ話題となっていた事柄が、突然がブームになることがよくあります。
しかも、それを投稿している本人は、「自分は画期的なことを見つけた!」と信じ切っており、反応している周囲も、「ネットで新しい情報をゲットした!」といった雰囲気です。
こうしたイタい人たちについても、ネット上の特定の情報源にだけハマっており、全体が見えていない可能性が高いわけです。
紙やテレビといった従来の媒体は、コンテンツに「編集」という作業が入りますから、何が流行で、何がそうではないのか、といったあたりが意図的にコントロールされてしまいます。従来の媒体が面白くないのはそこに原因があります。
一方、こうしたオールド媒体は大きく「外す」ことがありません。テレビを見ていれば、誰でも一定レベルの流行を正しくキャッチアップできたわけです。しかしネットの場合には、こうした作業がすべて利用者の能力に委ねられてしまいます。
これはネットが登場した時から指摘されてきたことですが、ネットという媒体は、私たち個人に対して、厳しく能力を突きつけてくる媒体です。ある意味で利用者にとってもっともシビアな媒体と言い換えてもいいでしょう。ネットを生かすも殺すも自分次第というわけです。