財務省が抜本的な歳出削減に向けた動きを加速させています。背景には危機的といわれる日本の財政問題があります。日本政府の借金はどの程度、危ないのでしょうか?
日本政府は資産を持っているから大丈夫?
現在、政府は800兆円以上の借金を抱えており、財政が健全な状態にあるとはいえません。2020年までに基礎的財政収支を黒字にするという公約を掲げていますが、消費税を10%に増税しても、達成は困難といわれています。
こうした状況に対応するため、財政に対してもっとも大きな負担となっている社会保障費を中心に歳出を見直す動きが活発になっているわけです。
日本政府の借金について、一部からは、政府はたくさん資産を持っているので、借金が多くても問題ないとする意見が聞かれます。しかし、国際的な比較や日本政府の資産保有状況から考えるとそうもいきません。
日本は資産を差し引かないグロスの数値では、債務のGDP比は先進国では断トツのトップです。しかし資産を差し引いたネットの数値でも、やはり債務比は高いままです。国際的な比較では、ネットかグロスかという議論はあまり意味をなしません。
また、日本政府が持っている資産というのは、独立行政法人への貸し付や単なる港湾施設など、現実には金銭価値のないものが多数含まれています。資産で負債を相殺するというのは、現実的に不可能と考えてよいでしょう。
問題は国債の暴落ではない
こうした議論に加えて、日本は十分な経済力があるので、国債は暴落などしないという見解もあります。しかし、この議論もあまり意味を持ちません。市場関係者で日本の国債が暴落するなどと考えている人はほとんどいないからです。
問題なのは国債が暴落することではなく、国際的に日本の財政に疑問符が付き、暴落ではなくても、国債の価格が下がることです。これは十分にあり得ます。
国債の価格が下がると金利が上昇します。もし現在の状態で金利が数%に上昇してしまえば、政府が支払う国債の利払い額が税収を超えてしまいます。こうなると、予算を組むことが出来なくなります。
こうなってしまうと、医療や年金の大幅カット以外に、破たんを回避する手段がありません。日本の財政に警鐘を鳴らしている人は、暴落を懸念しているのではなく、こうした事態を憂慮しているのです。
日本が今後、めざましい経済成長を実現んすれば、税収も好転し、財政再建を実現できます。しかし、現状ではその可能性は低いでしょう。
財務省では、年金給付年齢の引き上げ、富裕層に対する年金の給付制限などを検討しているようですが、これらは避けて通ることはできないでしょう。