経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

加谷珪一の投資教室 第7回

 企業の財務を見るにあたって最初にチェックすべきなのは売上高の推移ですが、次に重要なのは利益の推移です。特に重要なのは、当期利益や経常利益ではなく「営業利益」です。

 営業利益は、当期利益や経常利益と異なり、本業での利益を示しています。当期利益は、資産の売却や減損など、特殊要因で大きく上下にブレることがありますが、営業利益は、こうした特殊要因の影響を受けません。したがって、過去からの業績推移を見るにはうってつけの指標なのです。






 

 通常、売上高が順調に伸びている時には、それ以上の割合で営業利益が伸びていきます。

 売上高が伸びているのに営業利益が横ばいになっている、あるいは営業利益が減っているという場合には、薄利多売になっていたり、無理な営業を重ねているなど、マイナス要因が働いている可能性が捨て切れません。
 逆に、当期利益が何らかの理由で大きく落ち込んでいても、営業利益が順調に伸びているのであれば希望があります。当期利益が落ち込んだ理由を探り、それが一時的なものであれば、よい買いチャンスということになるでしょう。

 企業が公表する決算短信には通常、2期分の数字しか掲載されません。有価証券報告書を見れば5期分が分かりますが、営業利益は5期分掲載されていないことがほとんどです。
 したがって営業利益の推移を知るためには、決算短信などを過去何期分か遡る必要が出てきます。ちょっと面倒ではありますが、この手間を惜しまないようにしましょう。






 

 よく見かけるのが当期利益を使ったお化粧です。経営が苦しいので本社ビルを売却し、その売却益を当期利益に計上して増益になったとアピールするという手法は決算で多用されています。

 例えば三菱重工の2017年3月期の決算は、純利益が前年比37.4%の増益でしたが、ここには不動産の売却益が含まれています。ちょっと見ると調子がいいように思えますが、営業利益は51.4%のマイナスですから、本業が振るわない状態であることが分かります。

 とりあえず決算書を見たら、まずは売上高と営業利益の推移をチェックし、おおまかな事業の流れをイメージできるようにしてください。すべての分析はここからスタートするのです。

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