経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

加谷珪一の投資教室 第6回

 財務諸表を目にした時、最初にチェックすべきなのは、当たり前のことですが売上高です。数字の絶対値ではなく、どのように推移してきたのかが重要となります。これは非常に大事な話ですからしっかりと頭に入れておいてください。

 会社の業績は常に変動するものですが、今年好調だった企業が、次の年に突然失速するというケースはあまり多くありません。業績が拡大する時も同様で、売上高と利益が年々増加してくるというパターンを描きます。

 したがって企業の経営状態を調べるには、まずは売上高が過去3年間、どのように推移してきたのかを見ることが大事です。可能であれば3年ではなく5年が望ましいでしょう。






 

 例えば家電量販店最大手のヤマダ電機の2017年3月期の売上高は約1兆5000億円でしたが、5年前には1兆8000億円の売上高がありました。
 ヤマダ電機は郊外の店舗が多いですから、高齢化や都市部への人の移動など人口動態の影響を受けやすくなっています。これに加えて、アマゾンなどネット通販が台頭していますから、基本的にマーケットは縮小傾向です。

 同社に投資を検討する際には、毎年売上げが減っているという事実を最初に理解しておく必要があります。大きな動向を抜きに細かい業績を議論しても意味はありません。

 一方、ヤマダ電機の利益はそれほど変化していませんから、売上高の減少に対してコスト削減や利益率の向上でうまく対処したということになります。市場が伸びて利益を維持すること、縮小市場でコスト削減によって利益を維持することはまるで異なります。






 

  この情報があるだけでも、ヤマダ電機がどのような状態なのか、ある程度、客観的に把握することができるでしょう。

 こうした基本情報があった上でマスメディアなどの報道に接するのと、一切の知識がない状態で報道に接するのとでは、その理解度に大きな違いが出てくることは容易に想像できると思います。

 ある会社に興味を持ったら、まずは売上高がいくらなのか、そして過去5年間、どのように推移してきたのかチェックするクセを付けてください。

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