財務諸表を「お勉強」してはいけない

加谷珪一の投資教室 第5回

 財務諸表はファンダメンタル分析において中心的な役割を果たしますが、ここには大きな落とし穴が存在します。財務諸表は、あくまで会社とその経営状況を理解するためのものであり、道具であるとの割り切りが重要です。財務諸表について「お勉強」してはいけません。

 財務諸表は主に損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)の2つで構成されています。

 損益計算書は文字通り、1年間に、会社の売上高や利益がどのくらいあったのかについて示したものです。具体的には、売上高、仕入原価(メーカーの場合には製造原価)、経費(人件費、広告宣伝費など)、利益が記載されます。

 損益計算書を見れば、いくらでモノを仕入れて、いくらで売り、どれだけの経費をかけて、最終的にいくら儲かったのかが分かりますが、これが損益計算書を使う目的です。

 損益計算書に慣れてくると、その企業が過去1年間に、どのようにお金やモノを動かしてビジネスをしたのか、具体的にイメージできるようになります。これができれば、その企業の将来性を評価することはそれほど難しいことではありません。重要なのは勉強して覚えることではなく、お金の流れをイメージすることです。

 損益計算書はいわゆるフローの数字を扱ったものですが、フローの結果としてどの程度のお金が貯まったのか、つまりその企業の資産面(ストック)に着目したのが貸借対照表(B/S、バランスシート)です。

 新しく設立された企業が1年間に500億円を売上げ、最終的に50億円の利益を計上したと仮定しましょう。そうなると、その企業の資産は1年間で50億円増えたことになります。
 
 その企業が資本金10億円でスタートしていた場合、他に何も資産がなければ、次年度の資産額は60億円になっているはずです。また銀行から100億円お金を借りた場合には、その金額も資産に加わりますから資産額は160億円となります。この場合、負債の項目には60億円の借金が計上されることになります。

 バランスシートを見れば、借金が多すぎるのか少なすぎるのか、どれだけ資産を持っているのかなどが分かってきます。仮に業績が悪化した場合でも、何年間、耐えることができるのかなども分かります。新聞記事などで「財務体質は良好」という記述を見かけますが、これはバランスシートに負債が少なく、資本の額が厚いことを意味しています。

 資産全体から負債を引いた額(自己資本)が全体の10%を切ってくると、財務的にはかなり苦しくなってきます。5%を切ってしまうと、倒産なども囁かれる状況ですから注意が必要でしょう。

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