加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

*

収束しない都議会ヤジ問題。背景には何が?

 

 東京都議会のヤジ問題がなかなか収束しません。みんなの党会派の塩村文夏(あやか)都議に対して女性蔑視のヤジが浴びせられたことについて、都議会は2014年6月25日、信頼回復を目指す決議を本会議で採択しました。

 これを期に、都議会はしばらく休眠状態だった男女参画議連を再開したのですが、会長に就任したばかりの野島善司都議が今度は「(私的な場であれば)結婚したらどうだというのは僕だっていいますよ」と発言。再び都議会への批判が高まっています。

 こうした状況を見ると、日本のムラ社会的体質、非論理的な体質は、相当根深いものがあると痛感せざるを得ません。実はこうした体質は、現在の日本の国力低下と大きく関係している可能性があります。

批判されると撤回してしまうことが意味すること
 
塩村都議に対してヤジが飛んだり、野島都議がこのような発言をするということは、ホンネでは、女性に対して「結婚しろ」という事は、何の問題もないことであると考えている可能性が高いと思われます。

 議員というのは、有権者から信託を得て、自由に議会で意見を言う権利を与えられている人なわけですから、民主主義を否定するような主義主張を除けば(これを許容すると、議会制民主主義が機能しなくなる)、どのような思想信条についても発言が許されます。

 もし女性の結婚について、このような自説があるならば、それは正々堂々と主張すればよいはずです。しかし、ヤジを飛ばした鈴木都議も、今回の野島都議も、周囲から批判されると、いとも簡単に謝罪してしまいます。

 これは考えようによっては恐ろしいことです。議員に自由な発言が許されているのは、国民の基本的人権を守るためであり、行政府の横暴を防ぐためです。議員にとって言葉は命なわけです。そうであるにも関わらず、彼等は周囲から批判されると、簡単に自説を撤回し謝罪してしまいます。

 そもそも、自説を堂々と主張できない意志薄弱な人を、市民のリーダーとして議会に送り込んでよいものなのか疑問が湧いてきます(これは有権者が判断することですが)。

 さらにいうと「私的な場であれば言う」と発言していることについても非常に疑問です。私的な場ではOKだということは、議場でさえ発言しなければ問題発言にはならないと考えているということを示しています。

 つまり、彼は場所によって発言がコロコロ変わることについて、あまり問題視していないということになります。日本のムラ社会は、ホンネとタテマエという言葉があるように、発言が終始一貫しないことについて、あまり問題視しない風潮があります。

togikai

タテマエならタテマエを通す胆力が必要
 しかし、どんなに日本が古いムラ社会を維持しようと思っても、社会における価値観の多様化は進んでいきます。そして、国際社会では価値観の多様化についていけなければ、確実に国力を落としてしまいます。

 「女は結婚しろ」というのが彼の自説であればそれはそれで構いません。また周囲の状況を考え、ホンネではそう思っていても、表向きはそう発言しないという選択も、戦術のひとつしてはアリだと思います。

 しかし、もしそうであるならば、そのタテマエの発言は、いついかなる時もブレずに、維持するだけの能力と胆力が求められます。気持ちが緩むと、ホイホイとホンネが出てしまうような人に、本当に政治をゆだねてしまってよいのでしょうか?

 これはあくまで都議会の話ですが、今、説明してきたことは、日本社会全体の縮図といってよいものです。このところ、日本が上手に国際社会に適応できていないと感じている人は多いと思いますが、その最大の理由は、日本の国力(経済力)が落ちているからです。

 経済力の低下と国際社会にうまく適用できないことは、実は密接に関係している可能性があるのです。

 価値観が多様化している今の国際社会で競争力を保つためには、仮にそれがタテマエであっても、ブレずに貫き通すという、一貫した姿勢が必要なのです。

 議員は国民の映し鏡です。自説の表明ひとつで議員が右往左往している様は、まさに漂流する日本の象徴かもしれません。

 - 政治, 社会 ,

  関連記事

tokyowan
日本の1人あたりGDP順位急落をどう見るか?

 日本の1人あたりGDP(国内総生産)の順位が急落しています。1人あたりGDPの …

kyosantojomuin
中国主導のアジア金融システムとどう付き合うか?

 アジア地域の新しい金融システムをめぐってちょっとした事件がありました。英国の財 …

nettogeno6173
ネットの集合知と言語空間

 このところネットを検索していると、日本語空間における有益な情報が減っているとい …

toranpukawase
トランプ大統領がとうとう日本の為替政策を批判

 トランプ大統領が、批判の矛先をいよいよ日本の為替政策に向け始めました。これまで …

5goukan
官僚の能力が落ちている?

 派遣労働が常態化するとして、メディアでも議論の対象となっていた労働派遣法の改正 …

kaigohoken
介護離職ゼロ目標で顕在化する、日本の社会保障制度と経済政策の矛盾

 安倍政権が「1億総活躍社会」の実現に向けて「介護離職ゼロ」という野心的な目標を …

katsumawebsite
御嶽山被害をめぐる勝間バッシングから見えてくる、日本の問題点

 御嶽山の噴火によって多くの死者が出ていることについて、経済評論家の勝間和代氏が …

chojikanzangyo
米国人は休暇中でも仕事、日本は残業時間削減が国策

 先日、米国の経済紙に、休暇中でもパソコンを持ち込んでを仕事をするワーカホリック …

waitsuzeka
「ドイツに見習え論」の本当の意味

 ギリシャ新政権によるEUとの債務問題の交渉において、ギリシャ側が、突如、ドイツ …

hirari
米大統領選が示す複雑化した米国社会

 民主党のヒラリー・クリントン前国務長官がいよいよ米大統領選挙への出馬を表明しま …