スコットランド独立問題が問いかける国家の概念

 スコットランド独立の賛否を問う住民投票は、結局、賛成が45%、反対が55%なり、独立は否決されました。
 直前の世論調査では賛否が拮抗し、どちらに転ぶか分からないと言われていたことを考えると、少々、拍子抜けした感じもあります。しかし、スコットランドの独立騒動は、近代国家のあり方について、いろいろな問題を私たちに提起することになりました。

英連邦やスターリング圏という視点で見ると
 現在の英国は、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つからなる連合国となっており、これらを総称してUK(United Kingdom)と呼びます。
 ただ現実には英国はすでにかなりの中央主権国家となっており、ここからスコットランドが離脱するとなると、まさに国家分裂といったイメージなります。

 例えば、日本の中で北海道や沖縄が独立するということになると、これは大変なことです。確かにスコットランドの独立が可決されてしまうと、それは大変なことではあるのですが、英国の場合、少し状況が異なります。
 かつて世界帝国であった英国は、国家に対してもう少し柔軟な考え方を持っているからです。

 英国はかつて、かつてオーストラリア、インド、カナダ、ニュージーランドなどで構成される英連邦を形成していましたが、これらの国の多くは、英国の国王を国家元首としていました。広い意味では皆、英国だったわけです。

 今でもカナダやオーストラリアでは、エリザベス女王の代理である、カナダ総督やオーストラリア総督が国家元首として執務しています。

 両国はもちろんれっきとした主権国家であり、民主国家ですから、実際の政治権力を持つ首相が存在しています。当然ですが、英国の属国になっているわけではありません。
 しかし、一方で、名誉職とはいえ、いまだにエリザベス女王の名代が元首として存在しており、歴史的な経緯を尊重しています。

 この英連邦は、王制を否定する共和国でも加盟することができますから、実際にはかなりユルい国家同盟ということになります。世界を支配する必要があった英国は、それぞれの国の事情に合った統治が必要と考え、このような制度を考え出したのでしょう。

 同様に英国は、英ポンドを基軸通貨とする通貨同盟も各国と結んでいました。これをスターリング圏と呼びます。
 しかし、このスターリング圏もかなりユルい通貨同盟で、英連邦でもカナダのようにスターリング圏に入らなかったところもあります。

ukflag

近代国家の維持には合理主義が必要
 長々と英連邦とスターリング圏について説明したのは、スコットランド独立が両者と密接に関係しているからです。スコットランドの独立派は、独立後もエリザベス女王を国家元首にすると明言しています。また独立前と同様、ポンドを利用したいとも主張しています。

 これは要するに、UKは離脱するものの、英連邦には残り、スターリング圏にも残留すると言っているわけです。そうなってくると、スコットランドは独立したといっても、ほとんど英国のままであり、スコットランドの自治権を拡大することと、あまり大差がなくなってきてしまいます。

 英国政府は、スコットランドが独立した場合には、ポンド利用はできないとの立場を堅持してきましたが、もしスコットランドが本当に独立を可決してしまったら、これもどうなったかは分かりません。従来の状態に近い環境を維持するため、英国が通貨同盟に応じる可能性もあったわけです。

 日本人は、自身のことを単一民族による国家だと考えており(実際はそうではないのですが)、近代国家の枠組みと人種や民族の枠組みは完全に一致すると、無意識に思いがちです。しかし、近代国家の概念の発祥の地である欧州では、かならずしもそうとは限りません。

 かつて英連邦を形成した国々や、今回の独立を画策したスコットランドのように、実際にはもっと柔軟な枠組みがあり得るということになります。
 逆に言えば、しっかりとした合理主義に基づいて国家を形成しなければ、本当の意味での近代国家は維持できないということにもなるわけです。

 今回のスコットランド騒動をきっかけに、なぜ国家を形成しているのか、もう一度、考え直してみるのもよいでしょう。