FRBが利上げ打ち止めを示唆した理由は「景気後退」への懸念

 米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は、2018年12月19日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)において、2019年以降、利上げペースを減速するとともに、20年までに利上げを停止する可能性について示唆しました。これは何を意味しているのでしょうか。

トランプ大統領の圧力で打ち止めしたわけではない

 FRBはこれまで、年3~4回の機械的な利上げを続けてきました。2020年頃までは機械的な利上げを継続し、現在2%程度となっている政策金利を3%台半ばまで引き上げたい意向でした。3%台の金利があれば、仮に米国経済がリセッション(景気後退)に入っても、金利を引き下げる十分に余地があるため、政策的なオプションを確保できるからです。

 ところがトランプ米大統領はこうしたFRBの姿勢を強く批判してきました。トランプ氏としては「せっかく自分が景気対策を行っているのに、ブレーキを踏むとはケシカラン」といったところなのだと思います。一見すると、今回の利上げ打ち止め示唆は、FRBがトランプ氏の強い要請を受け入れた形に見えますが、現実は少し異なるでしょう。

 米国と中国は貿易戦争の状態となっています。今のところ米国の経済は堅調ですが、このまま貿易戦争が長引けば、確実に経済にとってはマイナスとなります。また世界景気もそろそろ踊り場に差し掛かるとの予想も増えてきており、FRBとしては、景気後退のリスクを気にし始めています。

 トランプ氏は大統領に就任すると、大規模減税に着手し、これによって米国景気は過熱しました。しかしトランプ氏が大統領に就任した時点で米国経済はかなり順調でしたから、トランプ氏がやっていることは、元気な人にさらに栄養ドリンクを飲ませるようなものです。

 本来であれば、景気が少し傾いた時に、こうした刺激策を実施するのがよいのですが、そのカードはすでに切ってしまった状態にあります。FRBとしてはこの状況に強い懸念を抱いており、景気動向に敏感になっているのです。

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日本としては米中交渉がまとまることを祈るしかない

 したがって今回、利上げ打ち止めを示唆したのは、景気後退への懸念が最大の理由と考えてよいでしょう。利上げを打ち止めすれば、トランプ氏の主張を受け入れた形になりますが、これは付随的なものです。

 ではFRBが気にしているように、米国経済は失速するのでしょうか。現段階では何ともいえないというのが、おそらく多くの関係者のホンネでしょう。

 先ほども説明したように足元の米国経済は絶好調です。しかし、貿易戦争の影響がいつ顕在化してくるのは誰にも分かりません。少なくともこのまま貿易戦争を続ければ、いつかは景気が足踏みすることになります。

 2019年以降、金利の上昇ペースが鈍化している間に米中間で交渉がまとまれば、米国経済は軟着陸し、一時的な踊り場に差し掛かることはあっても、持続的な成長を実現できるかもしれません。

 もし米国の景気が悪化した場合、もっとも大きな影響を受けるのは米国ではなく日本です。日本としては、とにかく米国と中国の交渉がまとまることを祈るしかありません。

 景気の不透明感が増してきているわけですが、こうした状況において、今後の景気動向を見極めるためには、金利やマクロ経済についての基礎的な理解が不可欠です。
 金利の見方について解説した「加谷珪一の金利教室」はこちら、経済学をわかりやすく解説した「超カンタン経済学」はこちらになります。ぜひ参考にしてください。