お金持ちになるためには職住接近が有利

お金持ちを科学する 第33回

 お金持ちの人に職住接近が多いというのはよく知られた事実です。全員がそうではありませんが、長い時間をかけて通勤している人はあまり見かけません。
 このような話をすると「それはお金持ちになったので家賃の高いところに住めるようになったに過ぎない」「相関関係と因果関係を混同した典型的なケースだ」といったお決まりの反論をよく頂戴します。

 相関関係と因果関係について考えを巡らせるのは、論理的な思考回路のトレーニングになるので悪いことではありませんが、上記のように単純に考えてしまうと、せっかくの論理的思考も実生活にうまく応用できません。

豊かになる前から職住接近を意識していた?

 お金持ちに職住接近が多いという事実は、あくまで相関関係を示したものに過ぎませんが、この情報だけをもって、因果関係が存在しないという回答を導き出すこともできません。物事の因果関係を立証するのはそう簡単なことではないからです。

 確かに経済的に豊かになった人は便利な場所に住むことで、より仕事や生活の効率を上げようとする傾向が顕著です。しかし、経済的に成功して職住接近を実現する人は、経済的に成功する前から、できるだけそうした環境に近づくよう、工夫と努力を重ねていた可能性が高いと筆者は考えます。

 ネットの普及でコマ切れの時間も有効活用できるようになったとはいえ、まとまった時間があることはあらゆる面で極めて有利に働きます。朝と夕方に大きなまとまった時間が取れるというのは、仕事の面でも健康の面でも、相当なアドバンテージになると考えてよいでしょう。

 経済的に難しいとしても、できるだけ通勤の負荷を減らす努力をしていた人と、当たり前のものとして何も考えずに受け入れていた人とでは、大きな差がつくのは当然なのです。

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思考回路との関係がむしろ重要

 読書など、通勤時間を有効活用できているという反論もありますが、こうした有効活用論のほとんどは、通勤が不可避であることが起点となっており、もしそれがゼロベースで存在していない場合にはどうなのかという視点が欠落しています。

 これは、自動運転技術が発達しても、クルマには運転する楽しみがあるので、自動運転は普及しないという話と似たような文脈と考えてよいでしょう。

 筆者は今はクルマを持っていませんが、クルマはかなり好きな方で、以前はずっとMT車に乗っていました。それは運転することが楽しかったからです。しかしながら、クルマが誕生した時から自動運転システムが存在していた場合、そうした楽しみが存在していたのかは分かりません。

 移動という目的が達成でき、しかも移動の最中は別な作業ができるということであれば、よほどの人でなければ、運転する楽しみという概念は持たなかった可能もあるわけです。

 職住接近に関する一連の話から分かることは、ひとつの考え方に凝り固まってしまうことは非常に危険だということです。

 経済的に豊かになるためには、時代の変化をしっかりと把握し、適切なタイミングでリスクを取る必要があります。

 そのためには、常に柔軟に物事を考え、自分と異なる価値観に接した時でも、反射神経的に反対せず、自身に問いかけてみる姿勢が重要です。職住接近の話は、むしろ、お金持ちと柔軟な考え方との因果関係と捉えた方がよさそうです。

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