ゴーン日産会長の逮捕で、ルノーとの統合問題はどうなる?

 日産自動車のカルロス・ゴーン会長が2018年11月19日、報酬を有価証券報告書に過小に記載した疑いがあるとして東京地検特捜部に逮捕されました。
 ゴーン氏を巡っては、日産とルノーの統合を求める仏マクロン政権との対立も取り沙汰されていました。場合によっては統合問題を含め、やっかいな事態となるかもしれません。

ゴーン氏の微妙な立ち位置

 ゴーン氏に対しては、自身の役員報酬を実際よりも低く有価証券報告書に記載した疑いが持たれています。上場企業の経営者がいくら報酬をもらっているのかというのは投資家にとって重要な情報ですから、この部分に虚偽記載があることは適正な市場運営という観点から許容されるものではありません。

 しかし投資家に対して事実と異なる報酬額を報告していたという疑いだけで、身柄まで拘束されるのかというと少々疑問が残ります。現時点では、詳細な情報が明らかではないので詳しい論評は差し控えますが、背後には別の要因が関係している可能性も十分に考えられるでしょう。

 日産はルノーの子会社ですが、日本での上場を維持しており、ルノーとは一定の距離を保ってきました。ゴーン氏が日本側の状況に配慮し、見かけ上、日産の独立を維持できるよう取り計らってきた結果ですが、このような措置はゴーン氏にとってもメリットがありました。

 その理由は報酬です。

 日本と同様、フランスでも上場企業の役員が過剰な報酬をもらうことは社会的に許容されていません。したがってゴーン氏はルノー本体からはそれほど多くの報酬を受け取ってきませんでした。

 一方、日産は日本の会社ですから、フランス本国からは実態が見えにくいという現実があります。このため、ゴーン氏は子会社である日産から莫大な報酬をもらうという形で、トータルの年収を拡大させていたわけです(過去記事「高額な役員報酬に妥当性はあるのか?」を参照)。

マクロン大統領と対立していた

 こうした微妙なバランスでルノーと日産の経営が行われていたわけですが、これに対して異を唱えたのが仏マクロン大統領です。

 ルノーの筆頭株主はフランス政府ですから、最終的にルノーや日産の経営権を握っているのはフランス政府ということになります。2017年の選挙で大統領に就任したマクロン氏は産業政策を重視。ゴーン氏に対してルノー日産の2社連合を見直し、ルノーと日産を完全統合するよう求めたといわれています。

 当初、ゴーン氏は統合に反対していましたが、マクロン政権からの強い圧力があり、徐々に態度を軟化させたとの報道もあります。

 ゴーン氏をめぐっては、報酬の不透明性という問題に加え、フランス政府の思惑も関係するなど状況が複雑化していました。こうした中でのゴーン氏の逮捕ですから、単純な図式とはいかなさそうです。