経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. お金持ち

人より半歩先を行くことが重要

お金持ちを科学する 第29回

 大きなイノベーションが発生するタイミングは、ほとんどの場合、お金儲けのチャンスになっています。説明するまでもありませんが、インターネットというイノベーションは多くの富を生み出す結果となりました。

イノベーションは昔から存在している

 イノベーションは今に始まったことではなく、いつの時代でも発生しています。古くは1830年代、英国で鉄道という、当時としては驚異的なイノベーションが登場し、近年のネットバブルもびっくりの株価になったことがあります。英国に遅れて近代化を開始した日本でも、やはり明治時代に巨大な鉄道株バブルを経験しました。

 また1920年代には米国で自動車が一気に普及し、GM(ゼネラル・モータース)の株価は何と200倍に高騰しましたし、日本でも戦後、自動車ブームでトヨタの株価は、65倍に上昇しています。

 イノベーションを上手に富に変えるにはタイミングが重要です。

 イノベーションに対する人々の心理は、マーケティングの世界ではかなり体系化されているのですが、そこでは新しく画期的な技術に対する人々の反応は以下の5種類に分類されます。

 ①革新者
 ②初期採用者
 ③前期追随者
 ④後期追随者
 ⑤遅滞者

inovation

早くても遅くてもいけない

 革新者に属する人は全体の2.5%程度しかおらず、イノベーションの初期段階では、こうした冒険心に溢れた人たちの利用が中心となります。続いて全体の14%程度を占める②の初期採用者が受け入れ始め、やがて本格的な普及が始まり、③以降の人が利用を開始します。

 イノベーションの波に乗るためには、本格的に普及する前に、手を付けておく必要があります。新しい技術が市場に本格的に拡大する境目は普及率15%といわれていますから、②の初期採用者の中に入っていないと、その果実を手にすることは難しいということになるわけです。

 しかしながら、早ければよいというものではありません。①の段階で起業したり、投資をしても、社会に受け入れられず、うまくいかないというケースがたくさんあるからです。有能な人ほど、この罠に陥る可能性がありますから、十分、注意してください。

 人よりも遅れてはダメですが、進み過ぎもよくありません。イノベーションで成功するためには、常に人よりも半歩先にいることが重要なのです。

お金持ちを科学する もくじ

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