経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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石破氏が無役になれば早期解散の可能性が高まる

 自民党の石破幹事長が、安倍首相が求める安全保障担当相を辞退する可能性が高まってきました。もし石破氏が正式に辞退し、無役ということになると、解散総選挙が早まる可能性があります。

今、内閣改造を行う理由
 安倍首相は9月3日をメドに、内閣改造を行う方針です。今回の内閣改造の表向きの理由は、集団的自衛権に関する憲法解釈変更に伴う法整備や、地方創世に向けた体制作りです。
 しかし、内閣改造の本当の狙いは、刻々と近づいているといわれる解散総選挙への準備であることは間違いありません。

 現在の衆院議員の任期満了は2016年12月となっており、同年の7月には参院選も行われます。年に2回の国政選挙は政党にとって負担が大きく、できればこの状況は避けたいと考えています。
 また、再来年までに支持率がどうなっているのか予測することは不可能ですから、解散を長引かせるのはあまり得策ではありません。

 安倍首相としては、支持率が高いうちに解散総選挙を行い、選挙に勝利して長期政権を目指したいところでしょう。そのためには、内閣改造がどうしても必要となります。

 というのも、基本的に自民党の政治家は、当選回数順で大臣や副大臣などのポストが割り当てられるます。野党時代が長かった自民党には、本来であればとっくに大臣や副大臣になっていたはずの人が、大臣になれずに待っているわけです。

 選挙の時には、現職大臣、元大臣という肩書きは大変に重要ですから、なるべく多くの政治家をポストに就かせる方が有利となります。このタイミングで内閣改造を実施する最大の理由はここにあるわけです。

 選挙で勝利すれば、安倍氏は政局の主導権を握ることができますから、その後は、大臣ポストをちらつかせて、党内をコントロールすることが可能になります。
 かつて長期政権を実現した小泉元首相や中曽根元首相は、内閣改造による人事をうまく使って影響力を維持してきました。今回の選挙はまさに安倍政権にとって正念場といえるでしょう。

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目下、最大の懸念は石破氏の動き
 そんな安倍政権にとって最大の懸念材料が、幹事長である石破氏の動きです。石破氏は幹事長という立場をうまく利用して、地方党員の支持固めを進めているといわれます。

 景気は失速しているともいわれますが、とりあえずアベノミクスの効果で株高や賃上げを実現してきたのは事実です。
 しかし地方にはアベノミクスの恩恵を受けられずにいる人も多く、石破氏が本格的に総理を目指して動き始めた場合、多くの地方票が石破氏に流れるとの見方があります。

 安倍氏は石破氏に対して安保法制担当相への就任を打診しました。党の職務をすべて統括する幹事長から石破氏を外し、閣内に取り込むことで、安倍政権を打倒する動きを封じようとしているわけです。
 当初、石破氏は幹事長の留任を強く望んでいましたが、現在のところ安倍政権側の力の方が強く、幹事長留任は難しそうです。

 もし、石破氏がすべての役職を固辞して無役になった場合、解散総選挙が早まる可能性があります。

 先ほど述べたように、2016年には任期満了による衆院選と参院選があります。また、来年春には統一地方選挙、9月には自民党の総裁選が迫っている状況です。

 4~6月期のGDPは年率6.8%という大幅な落ち込みとなっており、景気の先行きは不透明です。もしここで消費税が10%に増税されれば、景気の落ち込みはさらに激しくなるでしょう。
 また、今のところは大きな影響は出ていませんが、集団的自衛権の問題や原発再稼働の問題が選挙の争点として浮上してくると、主婦層などの票を取りこぼす可能性が高くなってきます。

 安倍政権としては、来年は支持率が下がる要素ばかりであり、その中で石破氏と総裁選を戦うのは得策ではありません。
 今、衆院を解散すれば、安保や原発が争点にならず、そこそこの結果で勝利できる可能性が高くなります。選挙での勝利という実績をバックに来年の総裁選に臨めば、長期政権を確実にすることができます。

 自民党が圧倒的多数を占める状況で、わざわざ早期に解散するのはデメリットが多いように思えますが、これらの政治日程や党内の駆け引きを考えると、早期解散は非現実的な話ではないのです。
 秋に入って永田町は一気に慌ただしくなりそうです。

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