日本における富裕層の資産が不動産に偏っている理由

お金持ちを科学する 第8回

 前回、説明したように、実業家がお金持ちになりやすいというのは世界共通の話ですが、実業家の次に資産形成に有利なのは、やはり不動産でしょう。

 実業家の中には、ユニクロの柳井氏やソフトバンクの孫氏のように、圧倒的な資産規模を持つ人が存在しますので非常に目立ちますが、資産家全体でいえば、不動産所有者が占める割合はそれなりに高いと考えられます。特に日本の場合には、不動産に偏る傾向が顕著です。

相続財産は圧倒的に不動産が多い

 筆者の推定では、富裕層の相続財産の約6割が不動産です。相続税の対象となるのは、妻と子供が2人いる場合で、4800万円以上の資産を持っている人ということになりますから、それなりの富裕層といってよいでしょう。

 もっとも、土地を持っていても、有価証券を持っていない、あるいは土地はないが多額の金融資産を持つなど、人によって資産分布は様々です。この数字はあくまでもマクロ的な平均値と考えてください。

 不動産が全体の6割を占める一方、現金は18%、有価証券は15%程度にとどまっています。ここでいうところの有価証券は、いわゆる一般的な株式ということもありますが、自らが所有・経営している企業の株式というケースが多いはずです。
 
 そうなってくると富裕層の多くはやはり不動産の所有者で、次に企業のオーナーという順序になると考えられます。だからといって不動産投資をすれば富裕層になれるのかというとそうとは限りません。
 不動産の所有者の中にはゼロから資産を積み上げた人もいますが、親から土地を引き継いだ人も多いからです。不動産に相続資産が偏っているということは、多くの人にはチャンスが広がっていないことの裏返しかもしれません。

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社会の流動性が少ないことの裏返し

 これに加えて、富裕層の資産の中で金融資産の割合が低いということは、社会全体として流動性があまり高くないことを意味しています。
 
 親から土地を相続したものの、あまり有効活用出来ていないというケースはザラにあります。こうしたケースでは、見かけ上は富裕層ということになりますが、内実は中間層と変わりなかったりするわけです。

 また事業の売却が活発に行われないと、自らの事業を流動資産にすることができません。欧米では、何かビジネスを始める際、カフェや自動車修理工場といった規模の小さい事業を他人から購入するというケースがよくあります。

 米国の不動産業者の中には、お店などの商業用不動産とセットで経営権の売買を手がけているところも少なくありません。このやり方であれば、すでにあるものを譲り受けるだけですからリスクも低く抑えられますし、事業を売った人は、まとまったお金を手にすることができます。
 
 海外では、長年営んできたお店を若い人に譲り、自身はそのお金と年金で老後を過ごすといった話をよく聞きますが、日本の場合にはほとんど耳にしません。事業の売却ができませんから、どうしても資産が不動産に偏ってしまうわけです。

 こうした状況を総合的に考えると、やはり日本においも、事業を始めることが、富裕層へのもっとも近道ということになりそうです。

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