有識者はたいていの場合、利害で発言している(評論家編)

加谷珪一の情報リテラシー基礎講座 第16回

 評論家やジャーナリストの場合には、学者とは少し異なる分析が必要となります。彼等の発言を受け止める上でもっとも重要なのは、彼等が文筆を生業にしているという点です。

評論家は評論自体をビジネスにしている

 前回は学者のケースを紹介しましたが、学者の場合、フルタイムの教員であれば、大学からの給料で生活そのものは維持することができます。したがって、何を主張するのかについては、学説や出身母体などの利害で変わるというメカニズムが成立していました。
 一方、商業ジャーナリズムの場合には、言論活動自体がビジネスですから、商売として成立していなければ何も始まりません。

 この業界に属している人にとってもっとも重要なのは、いかに読者を確保するのかということになります。Web媒体であればどれだけPVが稼げるか、紙媒体であれば何部売れるのかということが最大の関心事です。
 
 よくメディアが偏向報道をしていると批判されることがあります。メディアが時に偏向報道をするのは事実なのですが、問題はその理由です。多くの人は、特定の主義主張に沿ってこうした報道を行っていると考えがちなのですが、必ずしもそれは当てはまりません。

 商業ジャーナリズムは、基本的にビジネスですから、その媒体を見る読者や視聴者があって初めて存在することができます。政権批判や逆に政権の擁護、特定企業の批判や賞賛といった報道を見ると、ジャーナリズムは特定のイデオロギーに沿って活動していると思ってしまうからもしれません。
 しかし、商業ジャーナリズムがこうした報道を行うのは、最終的にはPVや視聴率、あるいは販売部数の増加を通じて利益につながるからです。

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ジャーナリズムに批判的な記事が多い理由はビジネスだから

 中には特定のイデオロギーに沿った報道を行うことを是としているジャーナリストや評論家もいますが、むしろそれは少数派です。基本的に彼等が考えているのは、どれだけ読まれるか、どれだけ見られるのかという部分であることを忘れてはいけません。

 一般的に、政権の擁護や特定企業に対する賞賛は世の中に溢れていますから、黙っていても常に一定数、目にすることになります。

 消費者はお金に対してシビアですからこうした情報はタダなら読みますが、なかなかお金は払いません。わざわざお金を出して欲しい情報ということになると、相手があまり出したくない情報ということになりますから、どちらかというと批判的な内容のものとなります。

 ジャーナリズムの記事に批判的な内容が多いという現実には、多分にこうした市場メカニズム的な側面があるのです。

 そう考えると、真の意味で中立的な情報というものは、そう簡単には存在できないということがお分かりいただけると思います。

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