近すぎても遠すぎてもいけない、コンビニと商社の距離(前編)

コンビニ経済学 第5回

 普段あまり意識することはないかもしれませんが、商社とコンビニには密接な関係があります。商社とどのような関係を構築するのかでコンビニのビジネス環境は大きく変わってしまうのです。

セブンと伊藤忠は二人三脚だった

 日本で最初にコンビニを本格展開したのはセブン-イレブンですが、同社は創業時から伊藤忠商事と二人三脚で事業を進めてきたという歴史があります。

 セブン-イレブンはもともと米国のサウスランド社が展開するコンビニ・チェーンでしたが、1973年にセブン&アイ・ホールディングスの前身企業であるイトーヨーカ堂が、サウスランド社とライセンス契約を結び、国内事業をスタートさせました。この時、両社の契約を仲介したのが伊藤忠です。

 セブンはそれ以来、伊藤忠経由で積極的に商品の仕入れを行い、伊藤忠側も新しい商材は優先的にセブンに紹介するという関係が続いてきました。

 ところがこうした両社の友好関係にヒビが入る出来事が発生します。伊藤忠はセブンとの取引を通じて、コンビニという業態の将来性が高い事をよく理解していました。そうしたところに西友がファミリーマートの株式売却を持ちかけてきたのです。

 西友から株式を買ってファミマを傘下に収めれば、伊藤忠はコンビニでさらに儲けることができます。しかしながら、既存の取引先であるセブンとは競合になってしまいますから、関係が悪化する可能性が出てきます。しかし伊藤忠はこれを千載一遇のチャンスと捉え、コンビニ事業への進出を決断します。

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商社が小売店をやってもうまくいかない?

 この話を聞いたセブンの鈴木敏文会長(当時)は激怒し、伊藤忠に対して「商社が小売りをやっても絶対にうまくいかない」と言い放ったそうです。しかしながらセブンは伊藤忠に対して怒りを覚えながらも、伊藤忠との取引を継続しました。

 コンビニは小売店ですから、もっとも売れる商品を集めてくるのがその使命です。伊藤忠がよい商材を持っているのなら、それを仕入れることが最終的にはセブンの利益につながります。
 一方で、長年の取引関係があるからといった理由だけで、特定の商社(卸)とダラダラと取引を継続することも御法度です。魅力のない商品を扱えば、たちまち顧客からソッポを向かれてしまうでしょう。

 この話は非常に大事なポイントを突いています。

 つまり小売店と商社(卸)というのは、基本的に利害が一致しないビジネスであり、セブンはそれを知り尽くしていたということです。

 小売店はできるだけよい商品を安く仕入れたいですし、商社はできるだけ高く売りたいと思っています。小売店は卸の商品に魅力がないと判断すればすぐに取引先を変えるべきすし、よい商品があるなら、感情的な問題に流されず取引を継続すべきです。

 伊藤忠がファミマに出資したタイミングで、三井物産はセブンとの関係強化に乗り出しましたが、セブンはやはり三井物産とも一定の距離を保っています。

 セブンは卸に近づきすぎないという鉄則を貫徹してきたからこそ、ナンバーワンの座を維持できたのですが、一方で、ファミマやローソンは商社のグループ会社あるいは子会社となっています。商社とコンビニが同じグループ企業であることは、メリットと弊害の両方がありますが、このあたりについては次回に説明します。

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