経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. テクノロジー

近い将来、多くの飲食店が街中から姿を消す?

 配車サービス大手のウーバーテクノロジーズが、無店舗型飲食店の支援に乗り出すことが明らかとなりました。ネット社会に移行すると宅配市場が急増するのは各国共通の現象です。宅配だけに特化する無店舗型飲食店が増加した場合、街中にある飲食店の数が激減する可能性があります。

米国では好景気にもかかわらず、レストランの売上高が減少

 ウーバーが検討しているのは、厨房設備などの貸し出しサービスで、零細事業者でも宅配に特化した飲食店を開店できるよう支援するそうです。

 ウーバーイーツは、アプリを使って飲食店から料理の配送を請け負う事業で、スタートから2年ほどになりますが、急激に利用者数を伸ばしています。楽天など国内事業者も同様のサービスを提供しているほか、吉野家など、飲食店側も次々と宅配メニューを強化している状況です。

 スマホの普及と社会のシェアリング化は、外食産業に質的な変化をもたらそうとしています。すでに米国では、昼食時に連れ立ってランチに行くという光景が目に見えて減ってきました。
 昼食を宅配で済ませる人が増加したことで、何とニューヨークでは、店舗物件の不動産賃料が下落しているそうです。米国の景気は絶好超であることを考えると、これはただならぬ事態です。

 オフィスでのランチ需要だけではなく、プライベートでの飲食店の使い方も変化しています。ネット通販が便利になり、ネットフリックスのような動画サービスが拡充されたことで、プライベートな時間を家で楽しむ人が増え、これが宅配サービスの増加に拍車をかけています。

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宅配市場の中では容易にシェアの下克上が発生する

 日本と米国では環境が異なるものの、中国でも似たような現象が観察されるという現実を考えると、ネット化とシェアリング化が外食産業の宅配シフトをもたらすというのは普遍的な法則のようです。そうであるならば、早晩、日本においても同じような展開になる可能性が高いでしょう。

 飲食店のコストのうち、店舗の賃料や減価償却など、顧客の来店に関わる部分の比率は35%~40%に達します。もし、宅配に特化すれば、この部分が大幅に浮くことになりますから、配送コストを考えても十分に採算が合います。

 ネットの宅配サービスであれば、チラシなどを使った広告宣伝も必要ありませんから、零細企業でも飲食店の経営は十分、成り立つでしょう。

 これまで外食産業の経営は立地がすべてでした。来客数の見込める場所に出店できるかが勝負であり、そのためには大きな経営体力を必要としていました。その結果として大手外食チェーン店が市場を席巻していたわけです

 ところが、宅配前提の無店舗型飲食店は、店舗網に縛られる必要がありませんから、零細企業でも参入できます。ネット宅配サービスの中での人気は、ユーザーによるレビューなどで決まってくるので、必ずしも知名度だけが売上高を左右するわけではありません。

 ネット化の進展によって、飲食店の業界では激しい下克上が起こる可能性があります。近い将来、街中から多くの飲食店が消滅している可能性も否定できないでしょう。

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