どこからを低所得者と定義するのか?(前編)

 このところ、格差や貧困、低所得といった話題に触れる機会が多くなっています。日本経済は長期低迷が続いており、相対的な豊かさが低下していますから、こうした話題が増えるのは当然のことかもしれません。

 しかしながら、貧困や低所得についてはイメージが先行しており、その実態について理解が得られているとは言えない状況です。まずは状況を客観的に把握することが問題解決の第一歩といえるでしょう。

低所得者の定義ははっきりしていない

 低所得者あるいは低所得者層というキーワードは一般的に使われていますが、実は低所得者に関する明確な定義というものは存在していません。メディアの報道では年収300万円以下の世帯を指していることが多いようですが、統一された基準ではありません。

 所得を考える際に注意する必要があるのは、個人年収と世帯年収の違いです。

 同じ年収300万円でも、夫婦が仕事を持ちそれぞれが300万円を稼いでいる場合には、世帯年収は600万円となります。年収500万円の専業主婦世帯よりも所得は多くなりますから、どちらの世帯が豊かであるのかについて、簡単に判断することはできません。このあたりが豊かさや貧しさを定義することの難しさといってよいでしょう。

 厚生労働省や各自治体など、福祉行政を担当する官公庁では、住民税が非課税になる水準や、生活保護を支給する水準を低所得の一つの目安にしているようです。

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おおまかには300万円以下が目安か?

 住民税が課税されない所得水準は、東京の場合、夫婦と子供一人の世帯で約200万円です。相対的貧困率を基準にした場合、2人世帯で約250万円程度になります(両者の前提条件は異なります)。厚生労働省も、調査によっては200万円以下を低所得者とするなどケースバイケースの対応をしているようです。

 生活保護を受給できる水準ということになると、世帯の状況によって大きく変わってきますが、単身の場合には200万円以下といったあたりがおおまかな基準となるでしょう。

 もっとも、税金という面から見た場合、所得水準の解釈は変わってきます。日本の所得税は累進課税制度となっており、所得の低い人からはほとんど税金を取らず、所得の高い人からたくさん徴収する仕組みになっています。逆に言えば、所得税率が極端に低くなる水準の年収を低所得と定義していることになります。

 累進税率の上昇ペースは、600万~700万円、1000万~1500万円を境にして大きく変化します。つまり税制の面では、600万円以下は所得が少ない人、600万~1000万円を中間層、1000万円以上を高額所得者と見なしていると解釈することが可能です。

 総合的に考えると、現時点においては、世帯年収が300万円以下の場合には、低所得者と考えてよいかもしれません。このうち、公的な支援を受けることができる水準ということになると、200万円以下がおおよその基準になると考えればよいでしょう。