経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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今度は大統領補佐官を解任。トランプ政権は一気にタカ派へ

 トランプ米大統領は2018年3月22日、ティラーソン国務長官に続き、政権の中枢メンバーであるマクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)を解任しました。後任の補佐官に起用されるのは、何とジョン・ボルトン元国連大使です。

後任は何とネオコンのボルトン氏

 大統領補佐官は、大統領の側近として、もっとも近い立場で大統領を支える職務です。特に国家安全保障担当の補佐官は別格とされ、あくまでスタッフではあるものの、米国の安全保障政策に対して強い影響力を持ちます(参考記事「スタッフとラインの違いを認識していますか?」を参照)。

 トランプ氏がマクマスター氏の解任を望んでいるという話は以前から報道されていたので、大きな動揺は見られませんが、それでも政権発足から1年で2人の補佐官が辞任し、国務長官までも更迭されるというのは、異常事態というよりほかありません。

 後任の補佐官に任命されるのは、何とボルトン元国連大使(写真)です。ボルトン氏は、ブッシュ(子)政権で国務次官や国連大使を務めた人物で、いわゆるネオコン(左翼から転向した新保守主義者)に属するとされています。
 ただ、ボルトン氏は米国の大物保守政治家であったバリー・ゴールドウォーター氏から強い影響を受けており、ネオコンというよりは新保守主義者といった方がよいかもしれません。

 ボルトン氏は、大の国連嫌いとして知られており、国連大使時代には国連を軽視する発言で何度も物議を醸しました。ティラーソン国務長官の後任であるポンペイオ氏は北朝鮮強硬派で、ボルトン氏も筋金入りの北朝鮮強硬派ですから、トランプ政権の外交政策は一気にタカ派に傾くことになるでしょう。

 トランプ政権の幹部が総入れ替えという状況ですから、北朝鮮との首脳会談もどう展開するのか先が読みにくい状況となっています。

Photo by Gage Skidmore

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北朝鮮強硬派が日本に親和的とは限らない

 日本にとって北朝鮮は極めて危険な存在ですから、国内の一部からは、米国の対外強硬派の人たちに期待する声が上がっているようです。しかし、米国における対中強硬派、対北朝鮮強硬派の多くは、実は日本に対してもあまり親和的とはいえません。

 ボルトン氏は、かつて広島を訪れたオバマ大統領に対して「恥ずべき謝罪ツアー」として批判しています。またトランプ氏も「なぜ真珠湾について言及しないのか」と発言しており、日本を含め、アジア各国に対しては基本的に高圧的です。トランプ氏は選挙期間中、日米安保破棄について言及したこともありました。

 日本人は何かと情緒で物事を判断する傾向が顕著です。しかし、相手は情緒ではなく、冷徹な思想や損得で動いています。日本は米国の同盟国ですから、北朝鮮に対して日米で協力して圧力をかけていくのは重要なことですが、米国側は、無条件に日本を友人として処遇しているわけではありません。

 特に中国や北朝鮮に対して強硬な人ほど、場合によっては日本に対しても強硬姿勢に出てくる可能性があります。力の強い人が、自分たちのかわりに北朝鮮に圧力をかけてくれるといった、無邪気な期待は持たない方がよいでしょう。
 米政権の外交方針がタカ派に寄ってきた現実を考えると、日本は今まで以上に、冷静な立ち回りが必要です。

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