銀行マンが転職できるかという話と、中高年の地域デビューにおける共通点(後編)

 前回はメガバンクのリストラに伴って、多くの銀行マンが転職市場に出てくる可能性が高いことや、一部の銀行マンに見られる過剰なプライドが新しい仕事の邪魔をすることなどについて解説しました。

周囲や部下が何でもやってくれる

 この記事は、メガバンクのリストラをきっかけとしたものですので、銀行マンの話を取り上げましたが、高いプライドが転身の邪魔をするというのは、実は銀行マンだけの話ではありません。いわゆる大企業に勤務する多くのサラリーマンにとって共通の課題といってよいでしょう。

 このところ中高年の地域デビューに関する話題を耳にすることが多くなっていますが、これにもまったく同じメカニズムが働いています。

 地域デビューの問題とは、定年退職が近くなり、引退後の生活を考えて地域のコミュニティに参加したものの、すべて上から目線になってしまい、周囲とうまく関係を構築できないという話です。そうなってしまう最大の理由は、日本企業独特の人間関係にあります。

 近代的な組織を構築できている企業では、役職者はあくまで機能として役職を担っているだけですが、日本企業のほとんどは、上司は全人格的にエライというカルチャーになっているはずです(筆者がかつて在籍していた大企業もそうでした)。

 上司は無愛想で、挨拶などしなくても、周囲が気を遣い、何でもすべてやってくれます。こうしたことに違和感を持ち、普通の人間としての感覚を失わないよう心がけた人なら何の問題もありませんが、このカルチャーにどっぷり浸かってしまうと、それを矯正するのは容易なことではありません。

 しかも困ったことに、こうしたヒエラルキーは、元請け下請けといった形で社外にも広がっていますから、ここでも従属的な人間関係が支配してしまいます。

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意図的にフラットな年下の知人を作る工夫が必要

 企業ムラ社会のこうした奇妙な光景は至るところで観察されます。

 先日、マンションの管理会社から依頼されて配管の修理に来た職人さんは、筆者とのやり取りの中で、「○○建物管理様から修理のご依頼をいただきました○×です」といった具体に、何十回も、仕事を発注したマンションの管理会社について「○○様」「○○様」とまるでお殿様のことを話すような口調で話していました。

 しかも、筆者が何か質問や依頼をするたびに「○○様にお伺いさせていただきます」(なぜが「お」や「させていただく」がつく)といった具合に、何度も何度も電話をする始末で、最終的な顧客である筆者のことはもはや眼中にはないようでした。

 元来、職人さんというのは、自分の技能でメシを食べている人たちですから、場合によっては発注者に対しても、少々ぞんざいで、作業の進め方については自分のやり方を曲げない、というくらいがちょうど良いはずです。おそらく、発注者であるマンション管理会社の担当者が相当に尊大な態度なのでしょう。

 上下の力関係だけに依存するコミュニケーションに慣れきってしまった人が、まったくフラットな関係が求められる地域社会でうまくやれるわけがありません。

 こうしたカルチャーは、すでに30代から染みつき始めるものです。そうならないようにするためには、意図的に年下の知人を作っていく努力が必要です(当然ですが会社の部下などではダメです)。年齢が離れていて、会社のしがらみがない状態で交流を維持できるのであれば、そのやり方は、そのまま地域デビューにも応用できますし、転職に際しても力を発揮するでしょう。

 人生100年時代を迎え、会社にいる時間は相対的に短くなっています。銀行マンの転職問題は、すべてのビジネス・パーソンに共通のテーマと考えた方がよいでしょう。