CIAの仕事の大半は公開情報の収集・分析

加谷珪一の情報リテラシー基礎講座 第6回

 情報を扱うプロ集団のひとつに各国のインテリジェンス(諜報)機関があります。CIA(米中央情報局)はその代表といってよい存在ですが、多くの人は、CIAと聞くと、おどろおどろしいイメージを持つのではないかと思います。
 確かにCIAのようなインテリジェンス機関は、相手国の中枢深く潜り込み、国家のために極秘情報を入手したり、要人を陥れるといった特殊工作を行っています。

諜報機関の仕事の大半は情報の分類と整理

 しかしながら、CIAをはじめとする各国のインテリジェンス機関の仕事の大半は、スパイ映画のようなものではなく、拍子抜けするほど地味だといわれています。

 各諜報機関には多くの情報アナリストが勤務しており、新聞や雑誌といった公開情報をベースに、コツコツと情報の分類・整理を行っています。こうした公開情報の分析が、実はあらゆるインテリジェンス活動の基礎となっているのです。

 また、インテリジェンス機関の諜報員がジャーナリストを兼務しているのは珍しいことではありません。このことは、日常的な情報の中に、非常に重要な情報がたくさん含まれているということを如実に表わしています。

 ここで「つまらない」と思った人もいるでしょうし「いや、そんなことはない。諜報機関は極秘理にもっとレベルの高い情報収集を行っているはずだ」と考えた人もいるかもしれません。

 実は、外部の人にこのような印象を持たせることも、インテリジェンス活動の一部なのです。

 筆者が知り合った、あるインテリジェンス機関の人物は「特別な情報収集能力があるように演出するのも、インテリジェンス機関の重要な仕事の一つだ」と語っていました。

 特別な情報を持っていると思わせることは、情報収集活動にとって非常に有効に作用します。情報を持っていると思われた人のところには、情報が集まりやすいという特徴があるからです。これはお金持ちのところにはお金が集まってくる話とよく似ています。

 インテリジェンス機関は、基本的に外部に対してその活動状況を公開しませんが、情報公開に消極的なのは、活動そのものが極秘ということもありますが、相手国に対して、情報収集能力の限界を悟られないようにするためでもあったわけです。

CIA本部

CIA本部

有用な情報のほとんどが公開されている

 さらにいえば、公開情報を徹底的に収集・分析するという基礎が備わっていると、重要な非公開情報を持っているのかについて、容易に判断できるようになります。

 情報のプロ同士の世界では、どこまでが公開情報なのかよく分かっていますから、誰がそれ以上の重要情報を握っているのかたちどころに分かる仕組みになっているわけです。逆に言うと、公開情報をしっかり分析、把握できていないと、重要な情報を持っていないことが一発でバレてしまいます。

 こうしたテクニックは実はあちこちで使われています。狡猾な政治家や官僚、企業経営者ともなると、公開情報をあたかも特別な情報であるかのように匂わせ、特定の人物にリーク(漏らす)することがよくあります。
 情報を受け取った側は、自分だけが特別な情報を得たと勘違いし、「ここだけの話」として拡散してくれるわけです。結果的に情報提供者が望む形で情報が広がっていきます。

 こうした手法が成立してしまうのは、情報を受け取る側が、公開情報の重要性をよく理解していないからです。何か特別な情報があるのではないかという過度な期待があると、そのように演出された情報に飛び付いてしまうのです。
 ネット上では、とっくに新聞で報道されていることを、あたかもスクープであるかのようにツイッターなどで喧伝している人をよく見かけます。

 世の中に出回っている有用な情報のほとんどは公開情報です。しかし、多くの人が、その存在をしっかりと把握できていないか、その価値を理解していません。逆に言えば、公開情報をしっかりと収集、分析する能力があれば、確実に情報戦争の勝利者になれます。

 ネットが発達している現代では、たった1人であっても、ちょっとしたインテリジェンス機関レベルの情報収集が実現可能となります。個人にとって、これほど有利な時代はないといってよいでしょう。

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