森友問題のきっかけを作った朝日新聞の報道から考える情報リテラシー(後編)

加谷珪一の情報リテラシー基礎講座 第5回

 前回は、わたしたちは、マスメディアの報道に何かを期待するのではなく、それを利用するというクールな姿勢が重要であることについて解説しました。今回は、文書書き換え問題をスクープした朝日新聞の記事を例に情報の読み解き方について解説します。

ニュースには必ず情報源がある

 報道には必ず、何らかの情報源があります。決算発表や記者発表など、公に公開されているものが情報源だった場合、基本情報は同じですから、後は、記事でそれをどう解釈したのかという部分が重要となります。

 経済関係のメディアによく見られる傾向ですが、企業に配慮して、大したことがない製品でも、画期的であるかのような報道を行うケースもありますし(記者がそう信じ込んでいるケースもあります)、逆に非常に重要な発表がベタ記事で終わっていることもあります。

 政府が経済統計を発表するような場合、政府側は、基本的に経済は良くなっているというニュアンスで説明しがちです。それをそのまま垂れ流す記者もいますし、批判的に書く記者もいます。また、読者も景気が良くなっていると思いたいですから「日本経済は力強く成長!」といった内容にした方がPV(閲覧数)や部数も増えるというのが、偽らざる現実です。

 いずれにせよ情報源は分かっているわけですから、こうした記事を見た時には、まず一次情報に当たるというのが基本中の基本です。
 政府や企業のWebサイトに行って、ナマの情報がどうなっているのか確かめるのがよいでしょう。その上で、各記事がそれをどう解釈しているのか比較することで、どれが真実に近いのか、検証していくことができます。

 問題は情報源が明かされていないケースです。

 今回のように、場合によっては犯罪になりかねないようなケースでは、マスメディアは情報源を徹底的に秘匿します。情報源の秘匿は、ジャーナリズムの大原則なのですが、このルールが存在している理由は、情報源を簡単に明かしてしまうと、誰もマスコミに情報を提供しなくなってしまうからです。それでは政府や企業の不正を明らかにすることができなくなってしまいます。

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ニュースが報道されて得するヤツを探せ

 情報源の秘匿は、もう少し下世話なレベルでも行われます。ある政治家や官僚、企業幹部などが、自分の組織に都合のよい情報をメディアに流して欲しい時、懇意にしているジャーナリストにだけ、情報源の秘匿を条件に情報を漏らす(リーク)することがよくあります。「関係者によると」といった表現がされているような記事は、こうしたパターンの典型です。

 このような記事を目にしたとき、情報リテラシーが高い人は、報道に対して怒ったり、喜んだりするのではなく、まず、情報源が誰なのか考えます。これは犯罪捜査と同じですが、「得をするヤツを探せ」というのが大原則です。その情報が流れてもっとも得をする人が情報源である可能性が高いということになります。

 では、今回の朝日の報道はどう考えればよいのでしょうか。

 朝日新聞は「改ざんされた文書を確認した」とだけ報道しており、現物を示していませんでした。おそらく現物写真を載せると、どこからの情報なのか分かってしまうからでしょう。朝日新聞に対しては、情報源を示していないのでフェイクニュースだといった批判が多数寄せられていましたが、こうした批判がナンセンスであることは、ここまで読んでいただいた方なら理解できると思います。

 重要なのはフェイクかどうかではなく、誰がどのような目的で、その情報を流しているのかという部分です。

 普通に考えれば、内部告発ということになりますが、必ずしもそうとは限りません。なぜならあまりにもタイミングが良すぎるからです。9月の総裁選を前に、与党内には安倍首相の3選を阻止しようという勢力があり、与党内は非常に緊迫した情勢です。

 このタイミングで、安倍政権にとって都合の悪いスクープ記事が出てきたということは、単なる内部告発ではない可能性も否定できないわけです。
 改ざんされた文書があることを知っていて、これを政局に利用したいと考える、それなりの立場の人物が関与した可能性はゼロではありません。

 さらに付け加えれば、朝日新聞に恩を売っておくことで、今後、メリットが大きい人というのも考えられるでしょうし、人ではなく組織という可能性もあります。それが誰なのかは皆さんで想像してください(もちろん単なる内部告発である可能性も十分にあります)。

 マスメディアの報道というのは、常にこうした切り口で読み説いていくことが重要です。こうした見方に慣れてくると、世の中の見え方もだいぶ変わってくるはずです。

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