経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 投資

パッシブ運用とアクティブ運用

加谷珪一の投資教室 第20回

 ファンダメンタル分析は、株価に法則性はないとする立場ですから、この点においてテクニカル分析と対立します。しかし市場が完璧(つまり効率的市場である)であるとは考えていません。

 市場が効率的だと仮定すると、過去の株価や財務情報など、すべての情報が株価に反映されることになり、過去の株価は将来の株価にまったく影響を及ぼしません。さらに、今あるすべての情報が即座に共有されるので、将来の期待についても、合理的に株価が形成されます。

 しかしながら、現実にこうした市場にお目にかかることはまずありません。情報には非対称性があり、重要な情報であっても市場参加者の中で完全に共有されていないことがほとんどです。

 こうした情報の非対称性があちこちに存在しているのであれば、本当はもっと企業価値が高いのに、その情報を多くの人が知らず、お宝銘柄が割安な価格で放置されている可能性が出てくることになります。各種指標を駆使して、割高、割安銘柄を一生懸命探すというのは、情報の非対称性に賭けた投資ということになるわけです。

 企業の将来に対する期待形成も同様です。

 すべての情報があらゆる投資家に即座に共有されるのであれば、将来の予測についても、ほぼ同じようなものになるはずです。多くの人が、将来性がないと判断した会社であるにも関わらず、別の人が見ると将来性が高い、ということは、この理論に従うなら、あり得ないはずです。ところが現実には、特定の人にしか正しい評価ができないというケースは無数に存在しています。

 そうであるからこそ、多くの人が、他人よりも高い投資成績を上げられると考え、銘柄の選定を行っているわけです。

 しかしながら、現実はそう甘くはありません。一つの例が、パッシブ運用とアクティブ運用の成績差です。

 投資ファンドの運用方法には、アクティブ運用とパッシブ運用の2種類があります。アクティブ運用は、ファンドマネージャーが積極的に割安銘柄や高成長銘柄を選別し、市場の平均値以上の成果を狙う投資手法です。これは効率的市場仮説を信じない一般的なファンダメンタル投資の考え方に近いといってよいでしょう。

 一方パッシブ運用は、ファンドマネージャーが積極的に銘柄を選別しません。日経平均などインデックスに投資を行い、市場が持っているリターン以上を狙わないという考え方に立脚しています。

 効率的市場仮説を信じているのなら、ムダなリスクを取らないパッシブ運用の方が合理的という結論になります。効率的市場仮説を信じていないなら、アクティブ運用を行う意味が出てきます。

 は、実際の結果はどうでしょうか?

 過去の実績では、アクティブ運用はパッシブ運用よりも明らかにパフォーマンスが悪いという結果が出ています。確かに、ジョージ・ソロス氏やウォーレン・バフェット氏など、卓越した成績を上げる投資家は、皆、アクティブ運用です。
 しかし、ファンド全体ということになると、パッシブ運用の方が圧倒的に成績が良く、たいていのアクティブ運用はうまくいきません。

 この結果を見ると市場が効率的だと主張する人の考え方にも一理あるように思えてきます。情報の非対称性を活用して、相手を出し抜くことは可能かもしれませんが、それができる人は実は少数派なのです。

 筆者自身はファンダメンタルをベースにしたアクティブ投資で大成功しましたが、どこまでが偶然で、どこまでが分析力による必然なのか正確に判断することは難しいと思っています。

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